マーストリヒト包囲戦 (1673年)

マーストリヒト包囲戦：仏蘭戦争における攻城戦の転換点

マーストリヒト包囲戦は、1673年6月13日から6月30日にかけて行われた、フランス王国によるマーストリヒトの包囲です。この戦いは、ルイ14世によるネーデルラント継承戦争におけるオランダへの報復、すなわち仏蘭戦争の一環として行われました。

背景：ルイ14世の野望とマーストリヒトの重要性

ルイ14世は、スペイン領ネーデルラントを併合しようと試みましたが、オランダが三国同盟を結成し、これを阻止しました。このことが、ルイ14世のオランダに対する強い敵意を生み、仏蘭戦争の開戦につながりました。1672年5月、ルイ14世はヘントとブリュッセルに陽動作戦を展開した後、オランダとリエージュ司教領の共同統治下にあったマーストリヒトを素通りしました。しかし、1673年になると、補給線が脅かされるようになったため、マーストリヒトの占領を決意し、6月11日に包囲を開始しました。

マーストリヒトは、当時としては非常に強固な要塞都市であり、その攻略は容易ではありませんでした。しかし、この戦いは、セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバンが大規模な都市を攻撃する最初の機会となり、彼の革新的な攻城術が試されることとなりました。

包囲戦の展開：ヴォーバンの攻城術と激戦

ヴォーバンは、大砲による城壁への砲撃に加え、新たな戦術を導入しました。6月17日から18日にかけての夜、トンフレ門の前に、城壁と平行して稲妻形に塹壕を掘るよう命じました。この塹壕により、守備軍はフランス軍に効果的な攻撃を行うことができなくなり、工兵が防御工事の近くまで進んで爆弾を仕掛ける際の遮蔽にもなりました。6月25日には、トンフレ門の前にある角堡とラヴリンへの強襲の準備が完了しました。

ルイ14世は、6月24日の洗礼者ヨハネの記念日に合わせて、マーストリヒトの教会でミサを行うことを望み、それまでに包囲戦を終わらせようとしました。塹壕が完成していたため、ダルタニャンの指揮下にある国王連隊と灰色マスケット銃隊は進軍を開始し、堀を越えて半月形の堡塁を一つ奪取しました。しかし、フランス軍の大部分はスペイン軍の派遣隊によって追い払われ、約30人がその夜を持ちこたえました。

フランス側で戦ったイングランド王国軍の指揮官モンマス公爵は、第1近衛騎兵部隊を率いて塹壕戦を指揮しましたが、その多くは同じプロテスタントであるオランダ軍と戦うことに抵抗を感じていました。さらに、イングランドの派遣軍の半分以上はオランダ人であったため、戦うことを拒否して逃亡する者も多くいました。ヘンリー・ジョーンズ・オブ・オックスフォードシャーは、フランスにおけるイギリス軽騎兵連隊を徴募して戦いましたが、戦死しました。ジョン・チャーチルという大尉がモンマス公の下で働きましたが、堀を守る遮蔽のある道を奪取しようとして、300人の損害を出した後に撤退しました。彼はアウトワークに旗を一本立てました。

翌朝、オランダ軍のジャック・ド・ファリオーがラヴリンを奪還しました。この半月形のラヴリンは、包囲軍が稜堡に到達するのを防ぐための防御工事でした。角堡（または冠堡）は周りが尖っており、あらゆる方向からの接近を防ぎました。

モンマス公爵は再び強襲を仕掛けましたが撃退され、その際にダルタニャンが戦死しました。モンマス公爵は「自身よりずっと年上で経験豊富な将軍のように振る舞った」と評されました。しかし、ファリオーはヴォーバンの攻城術が強力すぎると判断し、6月30日に降伏しました。翌7月1日には、駐留軍が栄誉をもって退去し、近くのオランダ駐留軍と合流する安全な通行権が保証されました。

その後：攻城戦の革命と和平

ナイメーヘンの和約により仏蘭間の戦争が終結すると、マーストリヒトはオランダに返還されましたが、ルイ14世はハプスブルク家領のいくつかの都市を獲得しました。この戦闘で最も重要なのは、ヴォーバンがもたらした攻城戦における革命的な進歩でした。彼は、塹壕の掘削や砲撃の集中など、組織的な攻城戦術を確立し、後の軍事戦略に大きな影響を与えました。

この戦いはイングランドでは不人気であり、1674年2月のウェストミンスター条約により終結しました。

マーストリヒト包囲戦は、単なる一つの戦闘にとどまらず、その後のヨーロッパの軍事史に大きな影響を与えた出来事でした。

もう一度検索