マーチン M130

マーチン M130（Martin model 130）

マーチン M130は、アメリカのマーチン社によって製造された大型の4発飛行艇で、1934年に初飛行を果たしました。特に、このモデルの中でもよく知られているのは「チャイナ・クリッパー」です。この名称は、パンアメリカン航空（パンナム）が発注した3機のうちの1号機に付けられました。

歴史的な背景

1935年11月22日、チャイナ・クリッパーはパンアメリカン航空の初の太平洋横断定期便としてデビューしました。この特別な便は、サンフランシスコのアラメダ飛行艇基地から出発し、観衆15万人の注目を集めました。旅はホノルル、ミッドウェー島、ウェーク島、そしてグアムを経由し、最終的にフィリピンのマニラに到着しました。この便で110,000通の航空郵便が届けられ、当時の航空輸送の重要性を示す記念すべき瞬間となりました。

マーチン M130は、同時期に製造されたシコルスキー S-42と比較しても、より大型で航続距離も5500キロメートルと非常に優れた性能を持っていました。巡航速度は時速252キロであり、現代の航空機に比べるとかなり遅いものでした。例えば、アメリカからフィリピンまでの旅は4泊5日もかかり、その間、乗客は各地のホテルで宿泊するスタイルでした。

乗客の楽しみ

機内にはラウンジや食堂も設けられており、豪華な客船の1等船室に対抗できるサービスが提供されました。とはいえ、通常の乗客数は14名程度に制限されていましたが、短距離であれば最大41名まで搭乗可能でした。また、郵便輸送機としての役割も果たし、1937年には香港、1941年にはシンガポールへの航路も開設されるなど、活動範囲は広がっていきました。

運航の終焉

チャイナ・クリッパーを含むM130は計3機が製造され、「ハワイ・クリッパー」や「フィリピン・クリッパー」といった名機も存在しました。しかし、1938年にハワイ・クリッパーが失踪し、残る2機も1940年までに1万時間以上の運航を記録しました。

1941年にアメリカが日本の真珠湾攻撃により第二次世界大戦に参戦すると、商業運航は終了し、M130はアメリカ海軍に徴用されます。その後の運命は厳しく、残されたチャイナ・クリッパーも1945年に事故で失われることになります。このようにして、製造された3機すべてが操作事故により失われる悲劇が訪れました。

航路復活とその後

戦後、航路が再開されましたが、性能の良い陸上機の登場により、豪華な飛行艇による旅は終わりを迎えました。しかし、この時代の飛行艇は今なお多くの人々に愛され、模型として作られたり絵画やイラストの題材になったりしています。

性能要目

• - 全長: 27.7m
• - 全幅: 39.7m
• - 高さ: 7.5m
• - エンジン: P&W R-1830（830hp×4）
• - 機体重量: 23,600kg
• - 巡航速度: 262km/h
• - 航続距離: 5,150km
• - 乗員: 4名
• - 乗客: 43名（または寝台18名）

このように、マーチン M130はその豪華な仕様と歴史的重要性から、航空史に名を刻む存在となりました。

もう一度検索