マーチ・842

マーチ・842（March 842）に関する詳細

マーチ・842は、1984年にイギリスのマーチ・エンジニアリングが製作したフォーミュラ2用のレーシングカーで、設計はラルフ・ベラミーによるものです。このマシンは、マーチのF2シリーズにおいて初めてカーボンファイバー（CFRP）をモノコックフレームに採用したことで注目を浴びました。前年のマーチ・832よりもホイールベースを約100㎜短縮し、フロントサスペンションの設計も見直されました。これにより、性能と操縦安定性が向上しました。

1983年には、マーチはインディカー界の主要チーム「クラコ」との提携を強化し、その結果、マーチのレーシングカーは「クラコ・マーチ」とも呼ばれるようになりました。したがって、マーチ・842は正式には「クラコ・マーチ・842」として知られています。

概要

マーチは1979年からF2レースにウイングカーの提供を開始し、その後、F2界においてウイングカーの主要な供給者となりました。マーチのF2ウイングカーは、次の3つの特徴を持っていました。
1. サイドウイングのサイズを大きくすることで、ダウンフォースを強化。
2. シャーシをナロー化することによって、サイドウイングのサイズアップを実現。
3. 大きなダウンフォースに耐えるため、シャーシとサスペンションの強化。
これらの技術的なバランスを保ちながら、ユーザーのニーズに応えたマシンを市場に提供しました。

1984年から、FIAはF2にもフラットボトムレギュレーションを導入しました。この規定では、車体底面がフラットでありつつ、サイドウイングのスカート下端の位置が一定の高さを保たなければなりません。これらの要求を受けて、ラルフ・ベラミーはマーチ・842の設計を行いました。

フレームとサスペンション

マーチ・842のモノコックフレームは、CFRPとアルミハニカムのハイブリッド構造で作られ、上部にはCFRP、下部にはアルミハニカムが使用されています。この設計により、強度を保ちながら軽量化を実現しています。また、フレームのデザインでは、ドライバーの安全を考慮し、肩の高さまでカバーする形状になっています。モノコックの堅牢な構造は、サーキットでの高い性能を維持するのに寄与しています。

フロントサスペンションにはプルロッド式インボードサスペンションが初めて採用され、これによりペダルの位置を見直しドライバーの快適性を向上させました。このシステムではダンパーがフレームに固定され、下端がアッパーアームの動きにしたがう形になります。この設計変更により、ホイールベースが短縮されましたが、フロントトレッドを広げることでバランスをとっています。

リアサスペンションは、前年度のマーチ・832と同様のロッキングアーム式を採用し、強度を高めています。これにより、耐久性のあるマシンが実現しました。

エンジンと性能

F2用エンジンとしては、2000ccのBMW・M12と、ホンダ・RA266が使用されました。ホンダエンジンは特別供給で、日本国内では特定のチームに供給されました。これにより、エンジンパフォーマンスの差別化が図られました。

マーチ・842の派生モデル

マーチ・842をベースにしたモデルも登場しました。例えば1985年のマーチ・85Bは、DFVエンジンを搭載し、サスペンションの強化が施され、フラットボトム規制への対応が行われました。一方、マーチ・85Jは日本F2選手権向けに設計され、在庫部品を利用したため、比較的簡素なマシンとなりました。

マーチ・842は、レーシングカーの設計における革新を大いに推進し、競技の現場における性能向上に寄与しました。レース参加者にとって重要な選択肢となり、後のフォーミュラカー構造デザインに影響を与えることになりました。

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