マートレット (ミサイル)

マートレット (Martlet)

概要

マートレットは、イギリスのタレス・グループ社（TADL）によって開発された軽量多目的ミサイルです。その最大の特徴は、重量を抑えながらも多様な任務に対応可能な設計であることです。空対地、地対空、そして地対地ミサイルとしての運用が可能であり、幅広い戦術状況での使用が想定されています。

名称の由来

このミサイルの名称は、イギリスの紋章学において伝統的に用いられる、足のない鳥の図像「マートレット」にちなんで名付けられました。

開発背景

開発の契機となったのは、イギリス国防省が推進した「次期空対地誘導兵器計画（軽量）」（Future Anti-Surface Guided Weapon [Light], FASGW[L]）です。この計画では、特にヘリコプターなどから運用される軽量で汎用性の高い誘導兵器が求められており、マートレットはこの要求に応える形で開発が進められました。

用途と特徴

マートレットは、以下のような多様な用途に対応できる柔軟性を持ちます。

空対地: 航空機（特にヘリコプター）からの地上・水上目標への攻撃。
地対空: 地上や艦艇からの低高度航空目標（ヘリ、UAVなど）の迎撃。
* 地対地: 地上プラットフォームからの地上・水上目標への攻撃。

軽量設計であるため、航空プラットフォームが多数を搭載できる利点があります。

開発状況と配備

イギリス国防省は当初、2013年の部隊配備開始を目指し、初回発注として1,000基を調達する計画でした。しかし、開発は計画通りに進まず、実運用能力の獲得には大幅な遅延が生じています。初期作戦能力（IOC）の獲得は2021年となり、本来の目標から約8年遅れました。完全な作戦能力（FOC）の達成は、現時点では2024年が見込まれています。

試験

開発過程においては各種試験が実施されており、特に2020年にはイギリス海軍のワイルドキャットHMA2ヘリコプターからの実際の発射試験が行われました。これは主要な運用プラットフォームとの適合性を確認する重要なステップでした。

技術的関連性

マートレットの開発においては、同じタレス社製の携行地対空ミサイル「スターストリーク」で培われた技術の一部が応用されているとされています。先行技術の活用は、開発効率化や性能確保に寄与するものと考えられます。

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