マーリーチャ

マーリーチャの物語

マーリーチャ（梵: मारीच, Mārīca）は、インドの古典叙事詩『ラーマーヤナ』における登場人物であり、ラークシャサ（羅刹）として知られています。彼はスンダとターラカーの子供で、元々はヤクシャ族に属していました。マーリーチャはその特異な能力により、変身や魔術を駆使することができ、特に美しい鹿を好むため、獲物として狙うことが多かったと伝えられています。

彼の運命は、父であるスンダが聖仙アガスティヤに滅ぼされたことから大きく変わります。復讐を誓ったマーリーチャと母のターラカーは、アガスティヤに立ち向かおうとしましたが、逆に呪われて悪魔に変えられました。この出来事が、彼の人生の一つの転機となります。

ある日、マーリーチャは同じく悪魔の仲間であるスバーフと共に、聖仙ヴィシュヴァーミトラの供犠祭を妨害しようと試みました。彼らは空から祭壇に血肉を撒き散らし、祭祀を台無しにしました。しかし、この行為はヴィシュヴァーミトラの目に止まり、彼はアヨーディヤの王子ラーマに祭祀の護衛を依頼します。再び現れたマーリーチャとスバーフは、拉致されたことを知らぬがゆえに守護者であるラーマに立ち向かいますが、ラーマの矢によってスバーフは倒され、マーリーチャは海に落とされました。

その後、マーリーチャはラーヴァナからシーターをさらう手助けを頼まれます。彼は既にラーマの武勇について知っており、最初はラーヴァナにこの計画を思いとどまらせようとしました。しかし、最終的には彼はラーヴァナを助ける道を選びます。マーリーチャは銀色の斑紋がある金色の鹿に姿を変え、シーターのそばで跳ね回ることにしました。

シーターはその美しさに魅了され、ラーマに鹿を捕まえるように頼みます。しかし、弟のラクシュマナはその鹿が悪魔の変身である可能性に気付きます。ラーマは、ラクシュマナをシーターのそばに残し、単独で鹿を追いかけることにしました。マーリーチャは巧みに逃げ続けましたが、ついに疲れたラーマによって矢が放たれ、死を迎えました。

マーリーチャはその死の瞬間、正体を現し、ラーマの声を真似てシーターとラクシュマナの名を叫びます。この声を耳にしたシーターは、ラクシュマナにラーマを助けに行くよう懇願しました。その結果、ラーヴァナはこの隙を突いてシーターを攫って逃げ去ります。

今回の物語は、マーリーチャの変転する運命とその行動が引き起こした波紋を描いています。彼の存在は、復讐心や裏切り、そしてそれに続く結果を象徴しています。マーリーチャは悪の化身として名を馳せ、ラーヴァナの策略に加担したことで、シーター奪還を巡る物語の重要な一幕を形成しています。

関連項目

• - スンダ：マーリーチャの父
• - ターラカー：マーリーチャの母

この物語は『ラーマーヤナ』の秀逸な一部であり、マーリーチャのキャラクターを通じて、神話における道徳や対立の構造を浮き彫りにしています。

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