ミカヅキシマアジ

ミカヅキシマアジ（学名：Spatula discors）は、カモ目カモ科ハシビロガモ属に分類される渡り鳥です。特徴的な形態と広大な渡り経路を持つこの鳥は、北米大陸を中心に生息しています。

分布

このカモは、毎年春から夏にかけては北緯60度よりも北のアメリカ大陸の広範囲で子育てを行います。秋が深まり冬の訪れが近づくと、暖かい気候を求めて南へと大移動を開始し、アメリカ合衆国の南部から、遠く南米大陸のウルグアイより北側の地域で冬を過ごします。

彼らの主要な生息圏は北米大陸ですが、稀に本来の渡り経路から外れてしまう個体もおり、これを「迷鳥」と呼びます。日本においては、過去に一度だけ、1996年の1月に愛知県を流れる木曽川でオスの個体が確認された記録があります。これは本種の分布域から大きく離れた、非常に珍しい飛来例とされています。

形態

ミカヅキシマアジは比較的小型のカモで、体の長さは約35センチメートルから41センチメートルの範囲です。翼を広げたときの幅、つまり翼開長はおよそ60センチメートルから69センチメートルになります。それぞれの翼自体の長さは、

オス: 18センチメートルから19.6センチメートル
メス: 17.5センチメートルから19.2センチメートル

程度です。

この鳥の大きな特徴の一つは、くちばしの根元、顔との境目あたりに白い模様があることです。また、足の色は鮮やかな黄色やオレンジ色をしています。

特にオスは、繁殖期を迎えると見事な羽衣をまといます。頭部は紫がかった灰色や青みがかった灰色になり、くちばしの付け根の白い模様は、名前の由来ともなっている美しい三日月のような形になります。胴体は温かみのある褐色を基調としていますが、体の下面には黒っぽい斑点が散りばめられています。翼の一部である雨覆羽は淡い青色をしており、飛んだときや翼を広げたときに目立ちます。さらに、翼の後ろの方にある次列風切羽には、光沢のある緑色の帯状の模様があり、これは翼鏡と呼ばれ、識別点となります。

繁殖期が終わった後のオス（エクリプスと呼ばれる非繁殖羽）や、メスは年間を通して、オスのような派手な色彩を持たず、全身が地味な褐色系の羽毛で覆われています。このため、繁殖期以外の時期は、オスとメスを見分けるのが難しくなります。

生態

本種は主に、川や湖、沼といった淡水域の湿地に生息しています。餌を採る際には、水面に浮かびながら、水中に顔を突っ込んだり、首を伸ばしたりして行います。他の多くのカモがよく行うように、尾羽を上げて体を逆さまにして水底の餌を探す行動は、ミカヅキシマアジではほとんど見られない特徴です。

繁殖は卵を産む形式で行われます。巣は水辺近くの丈の高い草むらなどに作られます。一度の産卵で、通常は10個から12個の卵を産みます。卵を温める期間は約21日から24日間で、この期間を経て雛がかえります。

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