ミケル・シトウ

生涯

ミケル・シトウは、1468年頃に現在のエストニアのタリンにあたるレバルで生まれました。父はフランドル出身の画家で彫刻家のクラベス・ファン・デル・シトウ、母はスウェーデン系フィンランド人の富裕な商人の娘マルガレーテ・モルナールでした。彼は三人兄弟の長男であり、二人の弟がいました。

1479年から1482年まで父親から絵画を学んだ後、1484年から1488年にかけて、当時ネーデルラントで最も著名な画家の一人であったハンス・メムリンクの工房で修行しました。しかし、ブルッヘのギルドではマスターの資格を得ることはありませんでした。この頃には肖像画家として生計を立てていたと考えられており、イタリアへの旅の記録も残っています。

1492年、シトウはカスティーリャ女王イサベル1世の宮廷画家としてスペインのトレドで活動を始めました。イサベル女王は多くの学者や芸術家を招聘しており、シトウもその一人でした。彼は宮廷内で「ドイツ人メルキオール」として知られましたが、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン1世やその娘マルグリット・ドートリッシュの書簡では「フランドル人ミケル」と呼ばれていました。シトウはイサベル女王の宮廷で最も高給を得ていた芸術家であり、年間5万枚の金貨銀貨を受け取っていました。これは、フアン・デ・フランデスの年俸2万枚を大きく上回る額でした。

シトウとデ・フランデスは共同で、イエスと聖母マリアの生涯を描いた一連の小さなパネル絵を制作しました。シトウは公式には1504年のイサベル女王の死まで宮廷画家として記録されていますが、実際にはその2年前にスペインを離れていたと考えられています。

その後、彼はイサベル女王の娘フアナと結婚したハプスブルク家のフェリペ1世のために、おそらくフランドルで活動し、サヴォイア公フィリベルト2世の肖像画を描いたとされています。1503年から1505年にかけてロンドンを訪れたという説もありますが、確かな記録は残っていません。ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーが所蔵するイングランド王ヘンリー7世の肖像画がシトウの作品である可能性も指摘されていますが、真偽は不明です。

1506年にフェリペ1世が亡くなると、シトウは再びパトロンを失い、故郷のレバルに帰郷しました。しかし、実家は母親の再婚相手であるガラス職人のディデリック・ファン・カテウィクによって占拠されており、財産相続を巡って訴訟を起こしましたが、最終的に取り戻せたのは1518年でした。

1507年に地元の芸術家ギルドの一員となり、翌年に結婚しました。シトウはすでにヨーロッパで名声を得ていましたが、ギルドでは職人として登録され、マスターとして認められるためには優れた作品を描く必要がありました。彼は様々な注文をこなし、フィンランドのシウンチオ聖ペテロ教会にも絵画を納めました。

1514年には、デンマーク王クリスチャン2世の肖像画制作のためにコペンハーゲンに招かれました。この肖像画はクリスチャン2世の婚約者イサベル・デ・アウストリアへの贈り物となる予定でしたが、現存する肖像画は模写である可能性が高いと考えられています。

その後、シトウはネーデルラント南部でネーデルラント総督マルグリット・ドートリッシュに謁見し、スペインに戻り、アラゴン王フェルナンド2世に仕えました。1516年にフェルナンド2世が亡くなると、後を継いだカルロス1世（後の神聖ローマ帝国皇帝カール5世）にも仕えました。シトウがスペインに戻ったのは、カスティーリャ女王イサベル1世からの未払い給料を取り戻すためだったという説もあります。

1516年、または1517年か1518年にシトウはレバルに戻り、1518年に商人の娘ドロテアと再婚しました。長男ミケルをもうけましたが、生後間もなく亡くなりました。1523年にギルドのマスターの称号を獲得しています。

シトウは1525年12月20日から1526年1月20日の間に、レバルで疫病により亡くなりました。遺体は聖霊教会の救貧院墓地に埋葬されました。

作品

ミケル・シトウの作品は、長らくの間、忘れられていました。しかし、1914年に美術史家マックス・ヤーコプ・フリートレンダーが、カスティーリャ女王イサベル1世の宮廷画家であった「マスター・ミケル」が、二連祭壇画の制作者ではないかという仮説を立てたことから、再び注目されるようになりました。その後、数十年にわたる研究により、「マスター・ミケル」の作品がシトウの作品であることが特定されました。

シトウは、主に小さな宗教画や肖像画を手がけ、その作風は、師であるハンス・メムリンクの影響を受けながらも、独自の繊細さと哀愁を帯びたものでした。彼は、半透明の絵具を幾層にも重ねることで、光線の効果と質感を緻密に描き出しました。

美術史家E.P.リチャードソンは、シトウの絵画を「少し後の時代のファン・ダイクのような画家」と評し、宗教画家としても肖像画家としても優れており、生き生きとして上品で慎み深い絵画であると述べています。

しかし、シトウの作品として確実とされている絵画は少なく、特定は非常に困難です。記録は豊富に残っているものの、確実な作品とされているのは、イサベル女王のためにフアン・デ・フランデスが中心となって描いた作品のうち、わずか2枚の小さなパネル画や、肖像画ではドン・ディエゴ・デ・ゲバラの肖像画など、ごく一部にすぎません。

シトウの作品とされている絵画にはサインや日付がないものが多く、制作年が特定できるのは、デンマーク王クリスチャン2世の肖像画ぐらいです。現在30以上の絵画が彼の作品ではないかと考えられていますが、そのほとんどは、確定に至っていません。また、記録に残る多くの絵画や彫刻は現存していません。

シトウの作品と考えられている絵画

聖母子像（二連祭壇画の左翼）、絵画館、ベルリン
ドン・ディエゴ・デ・ゲバラの肖像（二連祭壇画の右翼）、ナショナル・ギャラリー、ワシントン
聖母子像、ブダペスト西洋美術館
デンマーク王クリスチャン2世の肖像画、コペンハーゲン国立美術館
ヘンリー7世の肖像画、ナショナル・ポートレート・ギャラリー、ロンドン
カタリーナ・デ・アラゴンとされる肖像画、美術史美術館、ウィーン
カタリーナ・デ・アラゴンの肖像画、デトロイト美術館
聖母子と聖ベルナルド、ラサロ・ガルディアーノ美術館、マドリード
真珠を持った男の肖像、マドリード王宮
十字架を背負うキリスト、プーシキン美術館、モスクワ
聖母戴冠、ルーヴル美術館、パリ
女性の肖像、ルーヴル美術館、パリ
キリスト受難の祭壇画、聖ニコラス教会、タリン
男性の肖像画、マウリッツハイス美術館、ハーグ
キリスト降誕、美術史美術館、ウィーン
聖母被昇天（女王イサベルの小さな祭壇画のパネル絵）、ナショナル・ギャラリー、ワシントン
* キリスト昇天（女王イサベルの小さな祭壇画のパネル絵）、個人蔵

文学

エストニアの作家ヤーン・クロスが1970年に発表した小説『Neli monoloogi Püha Jüri asjus』には、主要人物としてミケル・シトウが登場します。

もう一度検索