ミケーレ・サンミケーリ

ミケーレ・サンミケーリ：ヴェローナの要塞建築家

ミケーレ・サンミケーリ（Michele Sanmicheli, 1484年 - 1559年）は、ルネサンス期のイタリアで活躍した建築家であり、軍事技術者としても著名です。特にヴェローナを拠点とし、その地で数多くの重要な建築物を手がけました。彼の作品は、重厚で堅牢な要塞建築が特徴であり、繊細で優美なアンドレア・パラーディオの建築とは対照的なスタイルを持っています。

生涯と活動

サンミケーリは、建築家の息子として1484年に生まれました。彼自身の手記によれば、1500年頃にローマに移り住み、建築家としてのキャリアをスタートさせたとされています。1509年にはオルヴィエート大聖堂の監督官に任命され、ローマ略奪が起こるまでその職務を務めました。

1526年、教皇クレメンス7世の命により、アントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ジョヴァネとともに、パルマ、ピアチェンツァ、そしてヴェネツィアの要塞視察に派遣されました。当時、ヴェネツィア共和国は、神聖ローマ帝国、スペイン、フランスといった列強に加え、コンスタンティノープルを占領したトルコ帝国の脅威にさらされていました。そのため、サンミケーリはヴェネツィア領のダルマティア、クレタ島、コルフ島などの要塞強化に尽力しました。また、ヴェローナのポルタ・ヌーヴォ（1533年）、ヴェネツィアのサンタンドレア・デル・リード（1535年）、ヴェローナのポルタ・パーリオ（1548年）といった要塞建築の設計と管理を担当しました。

これらの要塞建築以外にも、サンミケーリは数々の建築物を手がけています。ヴェローナでの初期の作品として知られるサン・ベルナルディーノ聖堂のペッレグリーニ礼拝堂（1526年頃）は未完のまま他の建築家に引き継がれましたが、パラッツォ・ポンペイとパラッツォ・カノッサは彼の建築思想を色濃く反映した作品です。これらの建築物の設計時期は明確ではありませんが、ヴェローナ移住後すぐに手がけたものと考えられています。特にこれらのファサードは、ドナト・ブラマンテが設計した『ラファエロの家』を模倣したものであるとされていますが、マニエリスムの影響も感じられます。

後期と最期

サンミケーリは、晩年である1559年に、ブラマンテの設計したテンピエットをモデルにしたマドンナ・ディ・カンパーニャ聖堂の設計を手がけました。彼の最後の作品は、ヴェローナにある円筒形の教会です。サンミケーリは、同年の秋にこの世を去りました。

サンミケーリの作品は、その重厚さと堅牢さから、軍事的な側面が強調されることがあります。しかし、彼は建築家として、当時の建築様式を深く理解し、それを独自の解釈で表現しました。彼の建築は、ルネサンス建築の多様性を示す好例であり、後世の建築家にも大きな影響を与えました。

主要な作品

ポルタ・ヌーヴォ (ヴェローナ, 1533年)
サンタンドレア・デル・リード (ヴェネツィア, 1535年)
ポルタ・パーリオ (ヴェローナ, 1548年)
パラッツォ・ポンペイ (ヴェローナ)
パラッツォ・カノッサ (ヴェローナ)
マドンナ・ディ・カンパーニャ聖堂 (ヴェローナ, 1559年)

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