ミザリー (映画)

ミザリー（Misery）

1990年に製作されたアメリカ映画で、スティーヴン・キングの同名小説を映画化したサイコスリラー作品です。ロブ・ライナーが監督を務め、主演のキャシー・ベイツがその迫真の演技で第63回アカデミー主演女優賞を受賞しました。タイトルの「Misery」は、作中の主人公が手掛けるロマンス小説シリーズのヒロイン名であり、また「哀れ」「惨めさ」「悲嘆」といった言葉を意味しており、物語の内容を象徴しています。

あらすじ

ベストセラー・ロマンス小説『ミザリー・シリーズ』の作者であるポール・シェルダンは、シリーズ最終作を発表し、新たな方向性の小説を書き上げた後、雪深い山道で激しい自動車事故に遭い、両脚を複雑骨折するなど瀕死の重傷を負います。

彼を発見し救助したのは、人里離れた場所で暮らす元看護婦のアニー・ウィルクスでした。彼女は自身をポールの『ミザリー・シリーズ』の熱狂的な愛読者だと名乗り、彼を自宅に連れ帰って献身的に介護します。しかし、外部との連絡を一切遮断し、ポールを自宅に留め置こうとするアニーは、徐々にその隠された狂気を露わにしていきます。

ポールが書き上げたばかりの新作を読んだアニーは、『ミザリー・シリーズ』のヒロインであるミザリーが出産時に死亡するという結末に激しく反発。怒り狂った彼女は、ポールに目の前で原稿を燃やすよう強要します。作品を灰にされたポールは、アニーの異常性に気づき、自らの生命が危険に晒されていることを悟ります。

アニーは新しいタイプライターと紙を用意し、ミザリーを生き返らせる新たな小説を書くようポールに命令します。ポールは隙を見て脱出を試みますが、電話線が切断されていることに気づき失敗。アニーが買い物に出かけた短い間に、隠されていた鎮痛剤を少量盗むのが精一杯でした。

一方、ポール失踪の捜索は、彼の車が発見されたことで打ち切られそうになります。しかし、車のドアに残された傷跡を見た地元の保安官バスターは、ポールの生存を確信し、独自の捜査を開始します。

アニーの厳しい監視下で、ポールは小説の執筆を強いられます。当初はアニーの意に沿わない展開を書いては却下されますが、やがて彼女が満足する「ミザリー復活」の物語を書き始めます。ポールは密かに盗んだ鎮痛剤を使い、アニーを眠らせて脱出する計画を立てますが、これもアニーがワインをこぼしたことで失敗に終わります。

物語が終盤に差し掛かる頃、ポールの足の怪我が回復に向かっていることを知ったアニーは、彼の逃走を警戒します。彼女が家を空けた隙に、ポールは家の中を探索し、アニーの過去に関する恐ろしい事実を知ります。彼女の周辺では不審死が相次ぎ、過去には新生児殺人容疑で逮捕された経歴があったのです。

さらに、ポールが部屋から出ようとした痕跡に気づいたアニーは激昂。ポールの逃走手段を完全に絶つため、彼の両脚をハンマーで粉々に砕くという残酷な行為に出ます。

バスター保安官はアニーの過去の犯罪歴と、彼女が熱狂的な「ミザリー」ファンであることを突き止め、アニーの家に向かいます。危険を察したアニーはポールを地下室に隠し、保安官を迎え入れます。シラを切るアニーに決定的な証拠を見つけられなかった保安官は一度は引き上げようとしますが、ポールの助けを求める声に気づき、アニーに射殺されてしまいます。

アニーはポールに無理心中を強要しますが、ポールは完成した原稿を燃やすと言ってアニーを挑発します。激怒して襲いかかるアニーとの死闘の末、ポールはかろうじて彼女を制圧し、間一髪でこの監禁から生還します。

1年半後、ポールの新作は大きな成功を収めます。しかし、彼はアニーとの凄惨な体験の記憶に今なお囚われ、日常生活の中でアニーの幻影に悩まされ続けるのでした。

主要キャスト

ポール・シェルダン：ジェームズ・カーン
アニー・ウィルクス：キャシー・ベイツ
バスター保安官：リチャード・ファーンズワース

スタッフ

監督：ロブ・ライナー
原作：スティーヴン・キング
脚本：ウィリアム・ゴールドマン
* 音楽：マーク・シャイマン

日本語版

日本語字幕は戸田奈津子が担当。日本語吹き替え版はソフト版（入江敦子翻訳）と日本テレビ版（福永莞爾演出、入江敦子翻訳）が存在し、KADOKAWAより発売された4Kレストア版Blu-ray・DVDには両バージョンが収録されています。

エピソード

監督のロブ・ライナーによると、主人公ポール役のキャスティングには苦労したといいます。著名な作家でありながら長期にわたり寝たきりという難しい役柄のため、多くの有名俳優から出演を断られたと語られています。また、キャシー・ベイツ主演の映画『フライド・グリーン・トマト』には、本作へのオマージュと思われるシーンが存在します。

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