ミシェル・アウン

ミシェル・ナイーム・アウンは、1933年9月30日生まれのレバノンを代表する政治家であり、同国第12代大統領を務めました。彼は、マロン派キリスト教徒であり、自由愛国運動（FPM）の創設者としても知られています。アウンの政治キャリアは、軍人としての経歴から始まり、レバノン軍総司令官を経て、政治の世界へと進出しました。

アウンは、レバノン内戦中の1988年、アミーン・ジュマイエル大統領から首相に任命されました。この人事は、伝統的にスンナ派の人物が首相を務めるという慣例に反していたため、国内の一部から反発を招きました。その結果、サリーム・アル＝フッスも首相を名乗り、レバノンには二人の首相が並立するという異常事態が発生しました。

1989年3月14日、アウンはイラクのサッダーム・フセイン政権の支援を受け、シリア軍が占領していたレバノンからの解放を目指し「解放戦争」を開始しました。しかし、1990年10月13日、シリア軍による攻撃を受け、数百人の死者を出すという悲劇に見舞われました。アウン自身は、ベイルートのフランス大使館に亡命を申請し、その後15年間をフランスで過ごすことになりました。

2005年、シリア軍がレバノンから撤退したわずか11日後、アウンはレバノンに帰国を果たしました。帰国後の2006年には、自由愛国運動代表としてヒズボラとの間で了解覚書に署名し、同盟関係を構築しました。さらに、2009年には、かつて戦火を交えたシリアを訪問するなど、和解への動きも見せました。

アウンは、帰国後に国会議員となり、自由愛国運動などが結成した会派「改革と変革ブロック」の代表を務めました。そして、2016年10月31日、サミール・ジャアジャア、スレイマン・フランジェ、アンリ・エルーといった他の候補者を退け、国会で大統領に選出されました。彼の選出は、長きにわたる政治的空白を埋めるものであり、レバノン政治における新たな章の始まりを告げる出来事として注目されました。

ミシェル・アウンの生涯は、レバノン内戦という激動の時代と深く結びついており、彼の行動は、レバノンの歴史と政治に大きな影響を与えました。軍人から政治家へ、そして亡命生活を経て大統領へと上り詰めた彼の人生は、複雑なレバノン情勢を象徴する出来事と言えるでしょう。

関連項目

* レバノン内戦

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