ミシェル・ヴィノック

ミシェル・ヴィノック

ミシェル・ヴィノック（Michel Winock, 1937年3月19日 - ）は、フランスの著名な歴史学者であり、パリ政治学院の名誉教授です。彼は近現代フランス政治史と政治思想史を専門とし、その研究と著作活動を通じて、フランスの歴史学界に多大な貢献をしてきました。

生涯と背景

1937年、ミシェル・ヴィノックはパリで生まれました。彼の父ガストンは、ベルギー国境に近いノール県で野菜栽培を営む勤勉なカトリックの家庭出身であり、母ジャンヌは同じく北部のオワーズ県出身の労働者階級でした。ミシェルは6人兄弟姉妹の末っ子として育ちました。

一家はパリ郊外のアルクイユに移り住み、父はバスの車掌、母は商店を経営していました。しかし、ミシェルが8歳の時に父と兄を結核で相次いで亡くすという悲しい経験をしました。これらの家族の歴史は、後に自伝『ジャンヌと家族』で明らかにされています。

教育

兄の死後、彼の本棚にあった本を読み始めたことがきっかけで、ミシェルは文学に興味を持つようになりました。兄弟姉妹の経済的な支援を受け、リセ・ラカナルを卒業後、ソルボンヌ大学に進学。文学と並行して歴史学も専攻し、1961年に文学博士号と歴史学の教員資格を取得しました。

教歴

モンペリエ、ヴェルサイユ、そして母校のリセ・ラカナルで歴史・地理の教員として7年間教鞭を執った後、1968年にヴァンセンヌ大学の助手となりました。この大学は、五月革命の精神を受け継ぐ革新的な高等教育機関であり、ヴィノックはここで新しい学問分野の創設に携わりました。その後、パリ政治学院に移り、1990年に教授に昇任、2001年に名誉教授となりました。また、マギル大学、ニューヨーク大学など、国外の大学でも教鞭を執りました。

歴史学の大衆化への貢献

ヴィノックは教育研究活動に加えて、雑誌や叢書の編集にも積極的に関わりました。『エスプリ』誌やスイユ出版社での活動を経て、1978年には歴史雑誌『リストワール（歴史）』誌を創刊。この雑誌は、アナール学派などの新しい動向や研究を紹介し、歴史学の発展と大衆化に大きく貢献しました。また、ペサック国際歴史映画祭の創設にも参加するなど、多岐にわたる活動を通じて歴史を広めることに尽力しました。

知識人としての考察

ヴィノックは「大衆的な知識人」とも呼ばれ、『知識人の時代』をはじめとする著作で知識人のあり方を問い続けています。彼は、知識人が政治や道徳に関わる「専業の知識人」と、専門領域で批判的な仕事を行う知識人に分けられると指摘し、自身は後者でありたいと述べています。

受賞歴

1997年 メディシス賞随筆部門（『知識人の時代』）
2008年 今日賞（『クレマンソー』）
2010年 ゴンクール伝記賞（『スタール夫人』）
2011年 アカデミー・フランセーズ ゴベール大賞
* 2012年 レジオンドヌール勲章シュヴァリエ

ミシェル・ヴィノックは、その学術的な業績と社会的な活動を通じて、フランスの歴史学に大きな足跡を残しました。

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