ミステリー列車が消えた

ミステリー列車が消えた：行方不明のブルートレインと10億円

西村京太郎の長編推理小説『ミステリー列車が消えた』は、1982年に新潮社より刊行された作品です。行先不明のブルートレイン「ミステリー号」を舞台に、前代未聞の誘拐事件と、不可能と思われた列車消失の謎が絡み合う、息もつかせぬ展開が読者を魅了します。

物語の始まり：謎の列車と消えた記者

物語は、1980年代の夏、東京駅10番線から出発した行先不明のブルートレイン「ミステリー号」から始まります。国鉄が企画したこの特別な列車に、雑誌「旅窓」の記者である津山研一は、恋人で同僚の乗兼由紀子に見送られながら取材のため乗車します。翌朝、到着地点から連絡を入れる約束をして。しかし、約束の時間は過ぎ、連絡は来ません。

不安になった由紀子は東京駅へ。そこで顔見知りの青木助役から、ミステリー号はすでに京都の梅小路機関区を訪れ、鳥取へ向かったと聞かされます。しかし、鳥取駅には到着予定時刻を大幅に過ぎてもミステリー号の姿はありませんでした。

そして、事件は急展開を迎えます。国鉄総裁秘書室に一本の電話。それは、「ミステリー号の乗客400人を誘拐した。身代金は10億円」という衝撃的な内容でした。

十津川警部と国鉄の共同戦線

この前代未聞の事件に、警視庁捜査一課の十津川警部と彼の部下である亀井刑事が挑みます。国鉄側からは、総裁秘書である北野浩らが捜査に協力します。

事件の解明は難航します。ミステリー号は忽然と姿を消し、乗客の安否も不明。十津川警部は、国鉄関係者、乗客、そして様々な関係者への聞き込みを進めます。東京駅、京都、鳥取…捜査は全国に広がり、事件の全貌解明のため、十津川警部と国鉄は協力体制を築きます。

捜査線上に浮かび上がるのは、国鉄内部の不正や、乗客の中に潜む犯行に関与した人物。そして、列車消失という、現実離れしたトリック。十津川警部は、鋭い推理力と綿密な捜査で、事件の真相に迫っていきます。

登場人物：個性豊かな面々

物語には、十津川警部と亀井刑事に加え、様々な個性豊かな人物が登場します。国鉄関係者、乗客、そして事件に巻き込まれていく人々。それぞれの思惑や秘密が複雑に絡み合い、物語に深みを与えます。

警察関係者: 十津川警部、亀井刑事、本多課長、その他捜査一課の刑事たち。
国鉄関係者: 国鉄総裁、総裁秘書、大阪鉄道管理局の職員たち、駅員など。ミステリー列車の運行に関わった人々が事件の重要なキーパーソンとなります。
* その他: ミステリー列車に乗車していた記者や乗客たち、そして事件に隠された秘密を知る人物たち。

これらの登場人物たちの行動や証言が、事件の真相解明に繋がっていくのです。

不可能のトリック：現実の鉄道システムとの対比

ミステリー号の消失トリックは、高度な技術と綿密な計画を必要とする、まさに不可能に近いもの。作中では、そのトリックの詳細や実行可能性については、議論の余地があります。実際、日本の鉄道システムにおいて、このトリックを実行することは不可能だとされています。専門家による分析も、その点を指摘しています。

しかし、この「不可能」なトリックこそが、物語の最大の魅力であり、読者の推理力を試す要素となっています。

テレビドラマ化：新たな解釈

『ミステリー列車が消えた』は、1995年に渡瀬恒彦主演でテレビドラマ化されました。小説とは異なる解釈や演出が加えられ、新たな魅力を生み出しています。

まとめ：昭和の鉄道ミステリー

『ミステリー列車が消えた』は、昭和時代の鉄道社会を背景に、スリリングな展開と複雑な人間模様を描いた、傑作ミステリー小説です。不可能とも思えるトリック、そして事件の真相に迫る十津川警部の活躍は、読者に大きな感動を与えてくれます。昭和の時代を知る人々にも、そうでない人々にも、深く考えさせられる作品となっています。 新垂井駅という、物語中に登場する現在は廃止された駅も、時代の流れを感じさせる要素です。 この作品を通して、昭和の鉄道ロマンとミステリーの融合を体験してみてはいかがでしょうか。

もう一度検索