ミズヒナゲシ

ミズヒナゲシ（Hydrocleys nymphoides）について

ミズヒナゲシは、キバナオモダカ科に属する浮葉性の多年生水草です。南アメリカを原産とし、観賞用として世界中で栽培されています。その特徴的な姿と鮮やかな花は、多くの人々を魅了しています。

外観の特徴

ミズヒナゲシは、トチカガミに似た浮葉性の水草で、水底の泥の中に根を張り、水面を這うように茎を伸ばします。茎は円柱状で、直径約5mm。浅い場所では水面から葉を出す抽水性植物のような姿を見せますが、深い場所では水面に葉を浮かべて広がります。茎は水中を横に伸び、節から根と葉を出し、新しい株を形成していきます。

葉：広卵形から広楕円状の心臓形で、長さ4～8cm、幅3～6cm。表面は光沢のある緑色で、7本の葉脈が走っています。裏面は淡い緑色で、葉脈がはっきりと見えます。葉の中軸には、高さ約3mmの海綿状の膨らみがあり、これは発達した通気組織です。

葉柄：円柱状で、太さ2～3mm。水深に応じて長さを変え、水位が上がると短時間で伸びて葉を水面に届けます。展開前の葉は内側に巻き込まれて棒状になっており、水面に達すると水平に開きます。

花：葉の付け根から伸びる花柄の先に、直径4～5cmの黄色い花を咲かせます。花柄の長さは7～10cm、太さは約3mmです。花弁状の内花被片は鮮やかな黄色で大きく、外花被片は緑色で小さく長楕円形です。萼片は3個あり、長楕円形をしています。雌しべは5～6個で、子房上位です。開花時期は日本では7～10月ですが、花は1日しか咲きません。しかし、次々と開花するため、毎日花を楽しむことができます。

日本では、通常種子ができることはありません。

名称について

学名の種小名「nymphoides」は、「スイレン属(Nymphaea)に似た」という意味を持ちます。英名は「water poppy（ウオーターポピー）」といい、これは水中性でヒナゲシに似た花を咲かせることに由来します。また、「water keg（ウオーターケッグ）」という別名もあり、kegは小さい樽を意味します。和名のミズヒナゲシは、この英名を参考に、植物学者の三木茂によって名付けられました。別名として、キバナトチカガミ、ミズウチワなどがあります。

分布

ミズヒナゲシは、南アメリカのベネズエラからアルゼンチンのブエノスアイレスまで分布しています。

利用

その美しい花から、観賞用として栽培されています。耐寒性は低く、越冬には最低5℃が必要となります。

イギリスには1830年頃に持ち込まれ、日本には明治初年頃に渡来したとされています。ただし、文献によっては、日本への渡来は昭和初年とする説もあります。

参考文献

石井林寧、井上頼数代表編集、『最新園芸大辞典 第3巻(HI-L)』、(1969)、誠文堂新光社
大滝末男、石戸忠、『日本水生植物図鑑』、(1980)、北隆館
* 『園芸植物大事典 2』、(1994)、小学館

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