ミゾロギミツキを探して

『ミゾロギミツキを探して』は、2018年に制作された日本の長編映画です。映画監督・吉野竜平がメガホンを取り、自身の作品としては3作目にあたります。本作は、映画教育機関であるニューシネマワークショップ（NCW）が主催する、映画俳優養成のためのワークショップ内で企画・制作されたという、ユニークな背景を持っています。

製作の意図と背景

吉野監督は、2011年の東日本大震災がもたらした深い傷跡から、2020年の東京オリンピック開催へと向かう過渡期にあった日本の社会が持つ独特の空気感を捉えようとしました。具体的には、震災から7年、オリンピックまで2年という2018年 4月2日の、ある一日を舞台に設定しています。物語の中心となるのは、震災の痛みを抱え続けてきたある家族の再生への道のりです。

監督の中で特に強く結びついたイメージは、津波で全てを流された後に公園として再建が進められる宮城県石巻市の南浜町と、来るべきオリンピックに向けて巨大な競技場が建設される東京湾岸・有明地区の風景でした。これらの場所が持つ、喪失と創造、過去と未来という対照的な意味合いが、この物語の着想の原点となっています。

本作の製作は、NCWのアクターズワークショップ「吉野竜平監督・映画出演クラス」の一環として行われました。出演者の15名全員がこのワークショップの参加者であり、実践的な学びの場として機能しました。撮影は2018年4月、準備期間を含めてもわずか4日間という短期間で集中的に行われています。初期のイベント上映時には、出演者に綿密な台本は渡されず、音楽も使用しないという、ドキュメンタリーに近い手法が試みられていました。これは、作品が持つ社会派としての側面を強調するための試みであったと言えます。

公開とその展開

本作はまず、2018年 7月14日から20日にかけて新宿のケイズシネマで開催された上映企画「ムビハイ18」の中で初公開されました。この企画はNCW関連作品を中心に紹介するものであり、本作はアクターズワークショッププログラムとして、期間中の7月16日と20日の2日間のみ上映されました。この際には、前年度の同ワークショップで制作された短編映画も併映されています。

その後、2019年 11月2日からは、再びケイズシネマにて、本作単独での1週間限定ロードショーが実現しました。NCWのアクターズワークショップから生まれた作品が、劇場用長編として単独で公開されるのは本作が初めてのことでした。劇場公開されるにあたり、吉野監督自身の手により再編集が施されました。新たな音楽が加えられたほか、上映時間も当初の約60分から71分へと延長され、より完成度の高い作品として観客に届けられることになりました。

2019年10月1日には、NCWの公式サイト内に本作の公式サイトが開設され、予告編トレーラーが公開されました。公式サイトには、中川龍太郎、本田誠人、渡辺紘文といった映画関係者からのコメントも寄せられています。

物語の概要

物語の舞台は、東日本大震災から7年、そして東京オリンピック開催まであと2年という節目の年である2018年の4月2日です。溝呂木家の人々は、震災による津波で全てを流され、未だに行方不明となっている長女・ミツキの手がかりを探すため、石巻から東京へとやってきます。

父と母は、SNSであるTwitterで知り合った人物の紹介を受け、女性霊媒師のもとを訪れます。一方、次女の風花は、姉・ミツキの元恋人に会うことを選択します。ミツキという存在を巡り、それぞれが異なる場所で特別な一日を過ごす中で、失われた時間を思い起こし、悲しみと向き合い、そして再生へと向かおうとする家族の姿が、ドキュメンタリータッチで丁寧に切り取られていきます。

キャストとスタッフ

本作には、主演の河合瑠果をはじめ、松木大輔、村田美輪子、そして霊媒師役のしゅはまはるみなど、NCWワークショップの参加者を中心としたキャストが出演しています。監督・脚本・撮影・編集を吉野竜平が兼任し、製作・配給・宣伝はニューシネマワークショップが行っています。また、劇場公開版では山根美和子が音楽を担当しました。

本作は、プロの俳優ではないワークショップ参加者たちが、実際の社会問題と向き合いながら映画制作に挑んだ意欲的な作品であり、そのドキュメンタリー性の高い表現と社会派テーマが注目されました。

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