ミッキー型の貯水塔

ミッキー型の貯水塔（Earffel Tower）

世界のディズニーパークを訪れる人々を迎え入れるランドマークの一つとして、巨大なミッキーマウスの耳を頂に戴く貯水塔があります。この特徴的な姿を持つ建造物は「Earffel Tower」（イヤーフェル・タワー）とも称され、そのデザインは、かつてアメリカのエンターテイメント産業の中心地であるハリウッドに実在した映画製作スタジオの給水塔からヒントを得ています。

起源とパークでの役割

ハリウッドの映画スタジオでは、引火しやすい木製のセットが多く使われていたため、火災対策は非常に重要でした。Earffel Towerの原型となった貯水塔は、万が一の火災発生に備え、大量の水を供給するための安全設備として建てられました。ディズニーパークに建設されたEarffel Towerが実際に貯水機能を担っているかは定かではありませんが、そのルーツはこうした実用的な防火設備にあります。

パーク内では、Earffel Towerはアトラクションとして利用されることはなく、主にテーマエリアの景観の一部として、あるいはシンボルとして機能しています。夜になると、ミッキーの耳の輪郭がライトアップされ、昼間とは異なる幻想的な姿を見せます。

かつてパークのシンボルだった場所：ディズニー・ハリウッド・スタジオ

アメリカ合衆国フロリダ州、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内に位置する「ディズニー・ハリウッド・スタジオ」にも、かつてミッキー型の貯水塔が存在していました。こちらの貯水塔は高さ約40メートルで、パークの開園当初は、ハリウッドの歴史ある映画館「グローマンズ・チャイニーズ・シアター」を模した建物と共に、パークを象徴する存在でした。

時代の流れと共にパークの風景は変化し、シンボルとしての役割も移り変わります。2015年2月25日には、グローマンズ・チャイニーズ・シアターをモチーフとしたアトラクションが運営を終了しました。それに伴い、パークの中心的なシンボルは、ディズニー映画『ファンタジア』に登場するミッキーの青い魔法使いの帽子へと変更されました。

そして、ミッキー型の貯水塔自体も、パークの再開発に伴いその場所を譲ることになります。特に、ピクサー映画『トイ・ストーリー』の世界観を再現した新エリア「トイ・ストーリーランド」の建設が進む中で、貯水塔のある場所も開発区域に含まれました。結果として、ディズニー・ハリウッド・スタジオのミッキー型貯水塔は、2016年4月29日にその役割を終え、撤去されることとなりました。これは、パークが常に進化し、新しい体験を提供するために起こる変革の一つと言えるでしょう。

現在も存在し親しまれる場所：ウォルト・ディズニー・スタジオ・パーク

一方、フランス、ディズニーランド・パリにある「ウォルト・ディズニー・スタジオ・パーク」では、現在もミッキー型の貯水塔がその姿をとどめています。このパークの貯水塔は、パリの象徴であるエッフェル塔にかけた洒落として、「アッフェル塔」（Earful Tower）という固有の愛称で親しまれています。

ウォルト・ディズニー・スタジオ・パークのEarful Towerは、かつてフロリダにあったものよりも高く、約49メートルの高さを誇ります。パークのエントランス近くに位置しており、来園者が最初に出会うシンボルの一つとして、パークの「ハリウッド映画スタジオ」というテーマパークの雰囲気を視覚的に伝えています。

それぞれの道をたどるシンボル

このように、ミッキー型の貯水塔は、世界の異なるディズニーパークでそれぞれ独自の役割を持ち、異なる運命をたどってきました。フロリダではパークの進化の過程でその姿を消しましたが、パリでは今もなお、独自の愛称とともに多くのゲストに親しまれるシンボルとして存在し続けています。ハリウッドの安全設備から生まれたこのユニークな建造物は、各地のパークの歴史やコンセプトを映し出す興味深い存在と言えるでしょう。

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