ミッシング・ポイント

『ミッシング・ポイント』（原題：The Reluctant Fundamentalist）は、2012年に公開されたアメリカ、イギリス、カタール合作の社会派ドラマ映画です。ミーラー・ナーイルが監督を務め、リズ・アーメッドとケイト・ハドソンらが出演しています。原作はモーシン・ハミッドの小説『コウモリの見た夢』です。

原題にある「Reluctant」は「しぶしぶ」や「いやいや」といった意味を持ち、「Fundamentalist」は「原理主義者」を指します。このタイトルが示すように、本作は複雑な背景を持つ主人公の心理と社会状況を描いています。

物語は、パキスタンでアメリカ人大学教授が誘拐される事件から始まります。CIAは、同僚の教授であるチャンゲスが事件に関与していると疑い、工作員のボビーを送り込みます。ボビーはジャーナリストを装いチャンゲスに接触しますが、チャンゲスはボビーの正体を見抜き、自らの過去を語り始めます。

チャンゲスは、アメリカ留学を経てニューヨークでエリートとして成功を収め、アメリカンドリームを体現していました。しかし、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけに、彼は不当な差別や迫害を受けるようになり、恋人との関係も悪化します。会社内での立場も微妙になる中、彼は葛藤を抱えながらもキャリアを積み重ねますが、やがて非情な仕事に疑問を抱き、すべてを捨ててパキスタンへ帰国します。そこで大学教授として働き始めますが、学生たちの愛国心を煽る一方で、イスラム原理主義の活動家たちとの出会いを経て、その偏狭さに気づき、距離を置きます。

ボビーはチャンゲスが事件に関与していると信じ込み、監禁場所を問い詰めますが、チャンゲスは事件との無関係を主張します。しかし、CIAはボビーの救出準備を進めており、事態は急展開を迎えます。チャンゲスは学生たちの身を案じ、監禁場所をボビーに伝えますが、直後にレニア教授が殺害されたという情報が入ります。チャンゲスがメールを送っていた場面を目撃していたボビーは、チャンゲスの指示で殺害されたと思い込み、チャンゲスを連行しようとしますが、混乱の中で取り逃がしてしまいます。その後、ボビーは病院でチャンゲスが録音した音声を聞き、「アメリカを愛している」という言葉に複雑な感情を抱きます。

この映画は、テロ事件後の社会における差別や偏見、アイデンティティの喪失、そして人間の多面性を描いています。リズ・アーメッドは複雑な内面を持つ主人公を演じきり、ケイト・ハドソンは主人公の恋人として繊細な演技を見せています。監督のミーラー・ナーイルは、社会問題を背景に、人間の内面を深く掘り下げた演出で、観客に深い印象を与えます。

作品の評価としては、Rotten Tomatoesでは批評家の意見が一致せず、評価が分かれています。一方で、Metacriticでは賛否が分かれるものの、一定の評価を得ています。この作品は、社会的なテーマを扱いながらも、エンターテイメント性も兼ね備えており、観る人に多くの問いを投げかけるでしょう。

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