ミッチ・アルボム

ミッチ・アルボム

ミッチェル・ディヴィッド・「ミッチ」・アルボム（Mitchell David "Mitch" Albom）は、1958年5月23日生まれのアメリカ合衆国を代表する作家、ジャーナリスト、脚本家、劇作家、放送者です。かつては音楽家としても活動した多才な顔を持ち、彼の著作は全世界で累計3000万部を超える売上を記録しています。キャリアの初期にはスポーツジャーナリストとして高く評価され、その後は小説や戯曲、映像作品において、心に響くストーリー展開と普遍的なテーマを描くことで知られるようになりました。また、故郷ミシガン州デトロイトでは四つの慈善組織を設立するなど、精力的な慈善活動家としてもその名を知られています。

生い立ちと教育

アルボムはニュージャージー州トレントンに、両親ローダとアイラ夫妻の子として生を受けました。幼少期にはニューヨーク州バッファローで短期間を過ごした後、ニュージャージー州のハドン・タウンシップへ移り住んでいます。この時期、後に彼の著書『ささやかながら信じる心があれば』にも登場するアルバート・L・ルイス牧師との出会いがあり、彼の勧めで礼拝堂に通い始めました。その後、同じくニュージャージー州内のオークリンに転居しています。

ニュージャージー南部やフィラデルフィア地域の高校で学んだ後、ユダヤ系の教育機関であるアキバ・ヘブロウ・アカデミーでも学びました。高等教育はマサチューセッツ州ウォルサムにあるブランダイス大学に進学し、社会学の学士号を取得しています。大学卒業後は、音楽家になるという夢を追いかけ、数年間にわたりアメリカやヨーロッパ各地のナイトクラブで演奏活動を行いました。しかし、自身の執筆における才能に気づき、転身を決意。コロンビア大学大学院に進学し、ジャーナリズムの修士号を取得しました。さらに同大学で経営学修士（MBA）も修めています。

1995年にジャニーン・サブリノさんと結婚し、現在はデトロイト郊外を拠点に生活しています。夫妻の間に子供はいません。

キャリアのハイライト：『モリー先生との火曜日』

アルボムの作家としてのキャリアにおける最大の転機となったのが、世界的ベストセラーとなったノンフィクション『モリー先生との火曜日』（Tuesdays with Morrie）です。1995年のある日、アルボムはテレビ番組『ナイトライン』で、かつてブランダイス大学で師事した社会学のモリー・シュワルツ教授が出演しているのを目にしました。シュワルツ教授は、終末期を迎えた筋萎縮性側索硬化症（ALS）という難病と向き合い、生と死について自身の考えを語っていました。

大学時代に親しい交流があったにもかかわらず、長らく連絡を取っていなかったことに自責の念を感じたアルボムは、ボストン郊外で療養するシュワルツ教授のもとを訪ねることにしました。この再会を機に、二人は毎週火曜日に集まり、人生のレッスン、そして死について深く語り合う時間を持ち始めます。アルボムは、教授の医療費を助ける方法を模索する中で、二人の対話を一冊の本として出版することを思い立ちます。しかし、多くの出版社から断られるという困難に直面しました。シュワルツ教授が亡くなる直前になって、ようやくダブルデイ社から出版の承諾を得ることができ、これによりアルボムは教授の医療費を負担することが可能になりました。

そして1997年、シュワルツ教授との交流を綴った簡潔な物語『モリー先生との火曜日』が、初版2万部という規模で世に出されました。当初は静かなスタートでしたが、読者の口コミによって徐々に評判が広がり、特に人気テレビ番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』で紹介されたことを機に、爆発的な売上を記録。同年10月には『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストにランクインを果たしました。その後も売上は右肩上がりに伸び続け、半年後にはついに第1位を獲得しました。この本は『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストに実に205週もの間ランクインし続けるという驚異的な記録を打ち立て、最終的には全世界で1400万部以上を売り上げ、41カ国語に翻訳される世界的ベストセラーとなったのです。

この本の成功を受け、オプラ・ウィンフリーはテレビ局ABCで同名のテレビ映画化をプロデュースしました。アルボム役をハンク・アザリア、シュワルツ教授役を名優ジャック・レモンが演じたこの作品は、1999年のテレビ映画として最高の視聴率を記録し、エミー賞を四つ受賞するなど、高い評価を得ました。さらにアルボムは、脚本家のジェフリー・ハッチャー氏と共同で、二人芝居の舞台版脚本も執筆。2001年秋にはニューヨークのオフ・ブロードウェイで上演されています。

『モリー先生との火曜日』は、その普遍的なテーマと平易な文章により、世界中の高等学校や大学で教材として採用されています。アジアの一部では、小学校でも読まれることがあるといいます。アルボムは、この本の印税の一部を元に、『モリー先生との火曜日基金』を設立し、慈善活動にも力を入れています。

舞台脚本家としての活動

作家としての活動に加え、アルボムは舞台脚本家としても才能を発揮しています。『モリー先生との火曜日』の舞台版をジェフリー・ハッチャー氏と共作した他、二つのコメディ戯曲『Duck Hunter Shoots Angel』と『And the Winner Is』を執筆しました。これらはミシガン州のパープル・ローズ・シアターで上演され、特に『Duck Hunter Shoots Angel』は同劇場公演で最高収益を記録しました。これらの作品は全国的にも上演される機会を得ています。2011年4月には、デトロイト・タイガースの名放送者であったアーニー・ハウェル氏へのオマージュとして戯曲『Ernie』を書き下ろし、デトロイトの市立劇場で初演されています。

主な著作

『モリー先生との火曜日』以外にも、アルボムは複数のベストセラー小説を発表しています。主な作品は以下の通りです。

『天国の五人』（The Five People You Meet in Heaven, 2003年）: 死後の世界で出会う五人との交流を描いた感動的な物語。
『もう一日 for one more day』（For One More Day, 2006年）: 死んだはずの母親と一日だけ再会する男性の物語。
『ささやかながら信じる心があれば』（Have a Little Faith: A True Story, 2009年）: 二人の異なる信仰を持つ聖職者との交流を綴ったノンフィクション。
『時の番人』（The Time Keeper, 2012年）: 時間の概念をめぐるファンタジー小説。
『天国からの電話』（The Magic Strings of Frankie Presto*, 2015年）: 伝説的なギタリストの人生を「音楽」が語るというユニークな物語。

彼の作品は、人生の意味、死、信仰、希望といった普遍的なテーマを扱い、世界中の読者に影響を与え続けています。

慈善活動

作家としての成功を社会貢献に活かそうとするアルボムは、慈善活動にも深く関わっています。彼は故郷であるデトロイト地域で四つの慈善団体を設立しました。これらの組織を通じて、恵まれない人々や子どもたちへの支援、ホームレスの支援、地域社会の再生など、多岐にわたる活動を展開しています。彼の作品同様、慈善活動においても、困難な状況にある人々に対する深い共感と支援の精神が根底にあります。

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