ミディール

ミディール：ケルト[[神話]]の地下神、愛と嫉妬、そして運命の物語

ミディールは、ケルト[[神話]]に登場する重要な神の一柱であり、トゥアハ・デ・ダナーン（ダーナ神族）に名を連ねる地下の神です。父は神々の長であるダグザ、育ての親は海の神マナナン・マクリルという、神族の中でも特別な血筋を受け継いでいます。妻はファームナッハ、養子には愛の神オェングスがいます。

概要

ミディールは、マン島に壮麗な王宮を所有していました。この王宮には、不思議な力を持つ3頭の牛と、決して尽きることのない大きな釜があり、豊かな食糧を供給していました。また、王宮には3羽の鶴がおり、侵入者が近づくとそれぞれ「来るな」「去れ」「通り過ぎよ」と鳴き、王宮を守っていたと伝えられています。

美しい妻を求めて

ミディールは、新たな妻として国一番の美女を迎えたいと考え、養子のオェングスに相談します。オェングスは、エーディンという女性が最も美しいと答え、ミディールはエーディンの父であるアイルに求婚します。アイルは、12の平原、12の川、そしてエーディンの体重と同じ重さの金と銀を要求しますが、オェングスはダグザの力を借り、これらの品々を用意し、ミディールはエーディンとの結婚を果たすのです。

嫉妬と転生

しかし、ミディールの妻ファームナッハは、エーディンの美しさに激しい嫉妬を抱き、エーディンを魔法で水たまりに変えてしまいます。水たまりから蝶へと姿を変えたエーディンを、ミディールは見つけ出しますが、ファームナッハは再び魔法で蝶を追い払います。7年間荒野を彷徨った蝶は、オェングスの宮殿に辿り着き、花畑で保護されます。夜の間だけ元の姿に戻るエーディンでしたが、ファームナッハは嵐を起こし、エーディンをアルスターのエタア王の元へ吹き飛ばします。エーディンはエタアの妻の胎内に入り、エタアの娘として生まれ変わります。1012年もの時が流れ、彼女は自分がトゥアハ・デ・ダナーンの一員であったことを忘れてしまっていました。

再会、そして別れ

アイルランド王エオホズ・アイレヴが、国一番の美女を王妃にしようとした際、選ばれたのはエーディンでした。王妃となったエーディンの前に、再びミディールが現れますが、エーディンは彼の記憶も、彼への想いも失っていました。ミディールは諦めず、二人が暮らした常若の国（ティル・ナ・ノーグ）での思い出を語ります。エーディンは、王が許すならミディールと一緒に行っても良いと答えます。

ミディールはエオホズ王にフィドヘルの勝負を挑み、負けた方が相手の願いを何でも叶えるという条件を付けます。最初はわざと負け、王の要求を魔法の力で次々と叶えますが、最後にミディールは勝利し、エーディンを連れ戻すことを要求します。エオホズ王は1ヶ月の猶予を与え、その間に王宮を軍勢で囲みますが、ミディールは難なく王宮に侵入し、エーディンを連れ去り、2羽の白鳥となって飛び去ります。

エオホズ王はエーディンを取り戻そうと、島にある妖精の丘を破壊し始めます。ミディールが魔法で丘を修復しても追いつかず、最後の丘だけが残りました。ミディールはエーディンを返すことを申し出ますが、エーディンそっくりの侍女50人の中にエーディンを紛れ込ませ、見分けるように言います。しかし、エーディンは自らエオホズ王に名乗り出ます。妖精の王ではなく、人間の王を選んだのです。ミディールの元を去ったエーディンは、エオホズ王との間に娘エーディンをもうけたとされています。

ミディールの物語は、愛、嫉妬、そして運命といった普遍的なテーマを描き出し、ケルト[[神話]]の中でも特に魅力的なエピソードとして語り継がれています。

参考文献

井村君江 (著) 『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』(ちくま文庫)

関連項目

オェングス
ダグザ
エーディン

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