ミトラ (宝冠)

ミトラについて

ミトラ（ギリシア語: Μίτρα、ロシア語: Митра、英語: miter）は、正教会において宝冠または王冠と呼ばれる特別な冠です。この冠は主教や特定の司祭が儀式で使用するため、教会における重要な象徴の一つです。

被る人

正教会では、ミトラを着用できるのは主に主教（総主教、府主教、大主教、主教）と、特定の司祭に限られています。ミトラを着用することが許可されている司祭には、掌院、首司祭、長司祭が含まれます。このため、正教会では他の宗派とは異なり、ミトラは特別な地位の象徴とされており、「主教冠」といった訳語は使われていません。例えば、日本ハリストス正教会では、「宝冠」または「王冠」と訳されます。

宝冠を被る場の限定とその意味

正教会においては、ミトラは奉神礼や特定の儀式の際のみ着用されます。公の場や世俗の集会では着用しないのが原則です。これは、正教信徒である主教や司祭が謙遜な心を持つべきであるという教えに基づいており、普段は自らを誇張しないことが求められています。

普段被る帽子には、円帽子（カミラフカ）、修道帽（クロブーク）、球帽子（スクフィヤ）などがありますが、これらは非常に質素なデザインです。ミトラの他にも華やかな祭服は奉神礼以外のときには着用せず、厳かな場でのみその存在感を発揮します。

ミトラは主に奉神礼の最中、あるいはその後すぐに会衆に祝福を与えるときに着用されることが一般的です。このように、普段は質素な服装をしている神品が奉神礼の際に華やかな衣服を身にまとうことは、キリストが持たれていた貧しさと高貴さの両面を象徴しています。これは、謙遜な者が神の王国の光栄をあらわす姿とも言え一般信徒にもこの意味を伝える意義を持ちます。

このように、ミトラは正教会における大切な宗教的な象徴であり、その着用には厳格なルールと深い意味が込められています。教会の儀式や奉神礼の重要性を理解し、どのような状況でミトラが使用されるのかを知ることは、正教会の信仰理解を深める上で非常に重要です。

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