クロブーク

クロブーク：正教会の修道士の帽子

クロブーク（ロシア語: клобук, 英語: klobuk）は、主に正教会および東方典礼カトリック教会において、修道士や修道司祭、主教が着用する特別な帽子のことです。この帽子はロシアの伝統的な宗教文化に深く根付いており、日本では「修道帽」とも訳されることがありますが、一般的には「クロブーク」の名称が用いられています。

クロブークの形状とデザイン

クロブークは、カミラフカという黒い覆いをもとに、そこにベールが付けられた構造を持っています。カミラフカは、頭の形に合わせて平らに整えられており、ベールはその上に完全に覆い被さる形で作られます。このベールは肩や背中に垂れるようにデザインされており、何らかの形で神聖さを象徴しています。一部の伝統、特にアトス山の慣習では、ベールはカミラフカに簡単に取り付けられているため、外すのが容易ですが、他の多くの教会ではベールがしっかりと固定されています。

修道士と主教の着用

教会では、修道士が奉神礼を行う際にクロブークを脱ぎ、左肩に乗せることで、神聖なものに対する敬意を表すことがあります。対して、修道女は一般的に奉神礼中にクロブークを脱ぐことはありません。このため、クロブークは修道士の象徴としての意味を持ちながら、彼らの精神的な役割をも象徴しています。

また、正教会においては、主教も全て修道士である必要があるため、クロブークを着用します。教区を担う主教はシンプルな修道士用のクロブークを身に着けますが、スラヴ系の大主教や府主教は、地位を示すために、通常、前面に小さな十字架の飾りが付いた特別なクロブークを着用します。ロシア系の伝統を持つ教会の府主教は、黒いクロブークを着用しますが、一方で白いクロブークが使用されることもあります。

地域による違い

例えば、フィンランド正教会の大主教は白いクロブークを着用するなど、どの役職がどの色のクロブークを着用するかは地域差があります。ルーマニア総主教は白いリヤサ（祭服）と白いクロブークを組み合わせて着用するのが一般的です。また、モスクワ総主教のように、特定の総主教はクロブークに似ているが、頂が丸く、セラフィムの像が飾られた白い帽子を着用します。この特別な帽子はクーコリ（ロシア語: Куколь, 英語: Koukoulion）と呼ばれています。

文化的な影響

著名な作家である村上春樹がアトス山を訪れた際に記録した『雨天炎天』の中では、クロブークが「バースデーケーキ」にたとえられ、「煙突みたいな帽子」として北野武から評されることもありました。これらの表現は、クロブークの独特な形状と存在感を示しており、文化的な影響の一端をわかりやすく表現しています。

結論

このように、クロブークはただの帽子以上のものであり、正教会における修道士や主教の重要なシンボルであると同時に、地域や伝統によってその意義や形状が異なる多様性を持っています。

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