ミハイル・テレシチェンコ

ミハイル・イワノヴィッチ・テレシチェンコは、激動のロシア革命期に重要な役割を果たした人物です。1886年、ウクライナのキエフで、砂糖工場経営などを行う裕福な大地主の家に生まれました。キエフ大学とライプツィヒ大学で学んだ後、1910年にはフリーメイソンに加わり、ロシア・フリーメイソンの主要メンバーとして活躍します。

アレクサンドル・ケレンスキーやニコライ・ネクラーソフといった革命家たちと交流を深め、第四国会（ドゥーマ）の国会議員にも選出されました。政治的にはロシア進歩党に近い立場でしたが、国会では無所属として活動。1912年から1914年にかけては、ペテルブルクで出版社の経営にも携わっていました。

第一次世界大戦が始まると、テレシチェンコは赤十字病院の組織化などに尽力します。1915年から1917年にかけては、キエフ地区の軍事産業委員会議長や全ロシア軍事産業委員会副議長を歴任し、戦争産業に深く関わりました。多くの資本家と同様に帝政ロシアへの不満を抱えていた彼は、皇帝ニコライ2世の打倒を支持し、二月革命に参加します。

1917年3月、ゲオルギー・リヴォフ公爵を首班とする臨時政府が成立すると、テレシチェンコは大蔵大臣に就任。ケレンスキーらと協力し、社会革命党などとの連立政権樹立を目指して奔走しました。同年4月、パーヴェル・ミリュコーフ外相が辞任すると、後任の外相に就任することになります。しかし、彼は戦争継続を主張し、戦争反対派であるアレクサンドル・ヴォルコフスキー陸相と対立するなど、臨時政府内部の対立を象徴する存在となりました。

10月革命勃発後、ボリシェヴィキに逮捕され、ペトロパヴロフスク要塞に投獄されますが、1918年春に脱獄に成功。ノルウェーを経て、フランスに亡命します。亡命後は白軍を支持し、ソビエト政権打倒のための活動にも関与しました。1920年代から1930年代にかけては、フランスとマダガスカルで金融関係の仕事に従事し、1956年4月1日、モナコで亡くなりました。

テレシチェンコは、ロシア革命という激動の時代を、資本家、政治家、そして亡命者として生き抜いた、複雑な人生を送った人物と言えるでしょう。彼の経歴は、ロシア革命とその後の混乱期を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。 彼の活動は、単なる資本家の枠を超え、政治的、社会的な影響力を持つ人物であったことを示しています。また、革命後の彼の行動は、当時の複雑な国際情勢やロシア内戦の様相を反映しているとも考えられます。

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