ミハイル・トゥシュマロフ

ミハイル・トゥシュマロフ（1861年 - 1896年）は、ロシア帝国の指揮者であり、グルジア人（本名トゥシマシヴィリ）でした。彼はオペラ指揮者としてワルシャワとトビリシで活動し、その短い生涯をグルジアで終えました。

トゥシュマロフの名が音楽史に残るのは、モデスト・ムソルグスキーのピアノ組曲《展覧会の絵》を初めてオーケストラ用に編曲した人物としてです。彼の編曲は、曲集全体の完全なオーケストレーションではなく、短縮版でした。リムスキー＝コルサコフに師事していた学生時代の1886年には、既に編曲に着手していたようです。一説には、リムスキー＝コルサコフ自身も《展覧会の絵》の編曲を試みたものの、トゥシュマロフの取り組みを知り、構想を断念したとも言われています。

トゥシュマロフ編曲版《展覧会の絵》は、1891年11月30日にサンクトペテルブルクで、リムスキー＝コルサコフ自身の指揮によって初演されました。リムスキー＝コルサコフが、師としてトゥシュマロフの管弦楽法にどの程度手を加えたのかは明らかではありません。トゥシュマロフ版は1891年に楽譜出版社ベッセリから出版され、彼の死後には改訂版が出版されました。現在ではカルマス社によって復刻されています。

トゥシュマロフ版の特徴は、「小人」や「ブィドロ」、「テュイルリーの庭園」といった楽曲に加え、5番目以外の「プロムナード」が省略されている点です。これにより、他の編曲版に比べて演奏時間が短くなっています。また、5番目の「プロムナード」が最初の「プロムナード」に置き換えられている点も特徴的です。

後のラヴェルによる技巧的な編曲版と比較すると、トゥシュマロフ版は音色が暗く、抑制されており、楽曲の解釈も「ロシア的」であると評されることが多いです。トゥシュマロフによる編曲は、「トゥシュマロフ版およびリムスキー＝コルサコフ版」と併記されることもありますが、恩師リムスキー＝コルサコフが編曲作業にどの程度関与したのかは定かではありません。

トゥシュマロフ版《展覧会の絵》は、マーク・アンドレーエの指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によって録音され、アカンタ・レーベルから発売されています（ただし、「トゥシュマロフ＆リムスキー＝コルサコフ版」としての扱い）。この録音を通じて、トゥシュマロフの編曲による《展覧会の絵》を聴くことができます。

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