展覧会の絵

組曲『展覧会の絵』の概要

組曲『展覧会の絵』は、1874年にロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキーが作曲したピアノのための作品で、友人である画家ヴィクトル・ハルトマンの死を悼み、彼の遺作展を訪れたときの印象を音楽に表現したものです。ムソルグスキーは展覧会の会場を歩きながら、10枚の絵に対する印象を形にしていきました。作品は独特な構成を持っており、各楽曲の間に入る「プロムナード」と呼ばれる短い間奏が特徴的です。この「プロムナード」は、巡回者であるムソルグスキー自身の視点から描かれており、曲ごとに印象や歩調が異なります。

作品の構成

『展覧会の絵』は、10曲の絵の印象を表現した楽曲に加え、5回繰り返される「プロムナード」が含まれています。これにより、各楽曲が連続しているのではなく、視覚的な体験を音楽で形作ることが強調されています。さらに、「死せる言葉による死者への呼びかけ」という楽曲が存在し、これは「プロムナード」の変奏に位置づけることも可能です。

各曲の特徴

• - 第1プロムナード: ゆっくりとした足取りで悲しみを抱える様子が表現されています。
• - 小人: 音楽の急な変化が、小人の不器用な動きを思わせます。
• - 古城: 中世ヨーロッパの古城を再現するように重々しい旋律が響きます。
• - ビドロ: 牛車の通り過ぎる様子が描かれ、力強いテーマが印象的です。
• - 卵の殻を付けた雛の踊り: 徒然とした小さな雛の動きが音楽で表現されています。

作曲の背景

1870年代初頭、ムソルグスキーはハルトマンと出会い、彼の死後に作曲を開始しました。ハルトマンの遺作展はサンクトペテルブルクで開催され、ムソルグスキーはその展覧会からインスピレーションを受けました。作品は1874年7月に完成しましたが、ムソルグスキー本人が生前に演奏することはありませんでした。彼はアルコール依存症や生活苦により私生活で苦しみ、1881年に死去しました。

編曲と再評価の経緯

ムソルグスキーの死後、彼の作品は長らく日の目を見ませんでしたが、リムスキー＝コルサコフによって整理され、1886年に『展覧会の絵』のピアノ譜が出版されました。リムスキーの改訂は原曲からの変更が加えられつつも、作品の広まりに貢献しました。それ以後、ラヴェルが1922年にオーケストラ版を作成したことで、作品は世界的に知られるようになり、特にオーケストラ版が多くの演奏会プログラムに取り入れられています。

現代における影響

『展覧会の絵』は多くの編曲やアレンジが行われ、特にロックバンドエマーソン・レイク・アンド・パーマーによるバージョンが話題となりました。また、現代の音楽家たちも様々なスタイルでこの作品を再解釈し続けており、クラシック音楽の枠を超えた多様な表現が存在しています。ムソルグスキーの楽曲は、絵画と音楽との相互作用を探る上でも重要な試みとして、今も多くの人々に感動を与えています。このように『展覧会の絵』は、音楽と絵画を結びつける作品として、人々の心に鮮明な印象を残し続けています。

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