ミヒャエル・モーザー (写真家)

ミヒャエル・モーザーの生涯と影響

ミヒャエル・モーザー（1853年 - 1912年）は、オーストリア帝国出身の著名な写真家で、1860年代の明治初期に日本で活動したことで知られています。彼は、16歳のときに師匠ヴィルヘルム・ブルガーの助手として初来日し、以降約5年半にわたり日本に滞在しました。その間、新聞のカメラマンや写真教師を務め、幕末から明治期にかけての貴重な瞬間を捉えた写真を数多く残しています。

生まれ育った環境

モーザーは、1853年にオーストリアのシュタイアーマルク州の温泉地アルトアウスゼーで、7人兄弟の2番目として生誕します。彼の父親は、農業のかたわら、鉱山労働や木工にも従事し、家族を支えるために多忙な毎日を送っていました。周辺地域は、皇帝フランツ＝ヨーゼフ1世が離宮を設けたリゾート地として名高く、写真家ブルガーがその美しい風景を捉えに訪れました。

あるとき、ブルガーのカメラの修理を依頼されたヨアヒムが、その手伝いとして残ったミヒャエルにブルガーの撮影を手伝わせたのが、彼の写真家としてのキャリアの始まりでした。この経験を経た後、モーザーはブルガーに弟子入りし、ウィーンに移ります。

日本への旅

オーストリアは当時、海洋進出を図り、日本との通商条約締結を目指していました。その活動の一環として、モーザーはブルガーに同行し、東アジア遠征隊に参加します。この遠征は1868年10月にスタートし、1869年には長崎や神戸を経由して横浜に到達しました。日本での滞在中、モーザーは様々な職業に従事しながら、その文化や風俗を記録しました。特に、横浜では居酒屋の給仕や写真スタジオの開業を経て『ザ・ファー・イースト』という写真入り新聞のカメラマンとしても活躍しました。

技術の教育と帰国

1873年、モーザーは日本政府の通訳として万博に参加し、その後も内務省で写真技術を教えました。彼は言語を習得し、さらなる専門的な技術を身につけましたが、1877年にオーストリアに帰国します。帰国後、故郷で写真スタジオを開業し、趣味と生計の両面で写真の世界に関わり続けました。

モーザーの写真の価値

2008年、日本研究者ペーター・パンツァーによってモーザーのガラス原板コレクションが発見され、そこには136枚の日本に関する写真が含まれていました。これらの写真は、明治期の日本の貴重な記録であり、当時の文化や街並みを非常にリアルに伝えています。写真コレクションはウィーンのバート・アウスゼーにて管理されており、現在も多くの研究者に利用されています。

最後の歳月とその後

1912年、モーザーは59歳で亡くなります。彼の遺した作品や写真は、今なお日本の近代史や文化研究において重要な資源とされています。研究者たちは、彼の作品と同時に残された日記や手紙を通じて、彼の人生や活動を深く掘り下げ、新たな発見を続けています。モーザーの影響は多くの世代にわたり、彼が記録した明治期の日本の文化は、後世にとっても大切な財産となっています。

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