シュタイアーマルク州

シュタイアーマルク州：オーストリアの豊かな歴史と自然が息づく地

オーストリア共和国を構成する9つの連邦州の一つ、シュタイアーマルク州は、同国で二番目に広い面積を有しています。州都はグラーツであり、同都市は自動車産業でも知られています。人口は約121万人、面積は16,392平方キロメートルに及びます。州の紋章は銀色の豹が描かれており、古くから鉄資源が豊富だったことから「鉄の辺境地 (Eisener Mark)」という別名も持っています。

名称の由来と多様な呼称

1056年、辺境伯オットカル1世の出身地に由来して名付けられました。「Mark」はドイツ語で「辺境地」を意味します。ドイツ語ではSteiermark、フランス語ではStyrie、英語ではStyria、スロベニア語ではŠtajerskaと呼ばれ、多様な言語で表現されています。また、この地域で話されるドイツ語の方言はSteirischと呼ばれています。日本語表記には、「シュタイアーマルク州」「シュタイアマルク州」「シュタイエルマルク州」「シュタイヤーマルク州」「シュタイヤマルク州」など、いくつかのバリエーションが存在します。

地理的な特徴と地域区分

シュタイアーマルク州は、北にニーダーエスターライヒ州およびオーバーエスターライヒ州、東にブルゲンラント州、西にザルツブルク州、南西にケルンテン州、南にスロベニアと国境を接しています。州内は、地理的な特徴からいくつかの地域に分けられています。北西部は上シュタイアーマルク（Obersteiermark）、グラーツの西側は西シュタイアーマルク（Weststeiermark）、グラーツの東側は東シュタイアーマルク（Oststeiermark）と呼ばれます。かつてはシュタイアーマルク州に含まれていたスロベニアのシュタイエルスカ地方は、下シュタイアーマルク（Untersteiermark）と呼ばれていました。また、カボチャの種子から作られるパンプキンシードオイルの主要な産地としても知られています。北部には石灰岩の渓谷や洞窟などの独特の地形が広がり、ユネスコ世界ジオパーク「シュタイリアン・アイゼンヴルツェン」に指定されています。

悠久の歴史：古代から現代まで

シュタイアーマルク州における人類の居住は、旧石器時代まで遡ります。ローマ帝国による征服以前は、イリュリア人、その後ケルト人がこの地に住んでいました。ローマ帝国は、この地域をパンノニア属州とノリクム属州に分割して統治しました。西ローマ帝国の崩壊後、ゲルマン民族の大移動を経て、6世紀にはスラヴ人のカランタニア公国が成立します。797年にフランク王国に征服されると、バイエルン人による植民とキリスト教化が進みました。10世紀にはマジャル人の侵入を受けますが、オットー1世の勝利後、東方の防衛拠点としてシュタイアーマルク辺境伯領が設置されました。オタカール家が世襲した辺境伯領は、1180年に神聖ローマ帝国によって独立公領に昇格します。1186年のゲオルゲンベルク協定により、シュタイアーマルク公位はオーストリア公が兼任することとなります。

1379年のノイブルク条約によるハプスブルク家領の分割の後、シュタイアーマルクは内オーストリアの中心地となり、グラーツは宮廷所在地となりました。15世紀から16世紀にかけてはオスマン帝国の侵攻を繰り返し受け、対抗宗教改革によるプロテスタントの追放も相まって、大きな打撃を受けました。1804年のオーストリア帝国成立後はその一州となり、第一次世界大戦後の民族自決によって、南半分はユーゴスラビア領となりました。ナチス・ドイツによるオーストリア併合（アンシュルス）時にはシュタイアーマルク帝国大管区が設置され、第二次世界大戦後にはイギリスの占領下に置かれました。1955年のオーストリア独立後は、西部工業地帯の衰退、東部農業地帯の工業化といった変遷を経験しています。また、リヒテンシュタイン家の私領が多いことでも知られ、同家の前国王フランツ・ヨーゼフ2世は州南部で誕生しました。

政治構造と州首相

シュタイアーマルク州議会は56議席で構成されています。長らくオーストリア国民党（ÖVP）が第一党でしたが、2005年の選挙でオーストリア社会民主党（SPÖ）の州首相が誕生しました。その後、2015年の選挙ではÖVPが再び州政権を握り、現在もÖVPが州政権を維持しています。過去には、様々な政党が州政権を担ってきました。

地方行政区分

シュタイアーマルク州は12の郡（Bezirk）と、郡に属さない州都グラーツ（憲章都市）に分けられています。さらに、287の基礎自治体（Gemeinde）があり、そのうち35が市（Stadt）、122が町（Marktgemeinde）に指定されています。

交通と文化

シュタイアーマルク州には、ファイシュトリッツタール鉄道などの交通網が整備されています。また、ドビュッシーのピアノ曲「スチリー風タランテッレ」にも州の名前が用いられているなど、文化面でも豊かな歴史を持っています。近年では、F1オーストリアグランプリも開催されています。

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