ミミナガバンディクート

ミミナガバンディクート：砂漠の生存者、その生態と保護の現状

ミミナガバンディクート（Macrotis lagotis）は、哺乳綱バンディクート形目ミミナガバンディクート科に属する唯一の現生種であり、オーストラリアの乾燥地帯に生息するユニークな有袋類です。別名ウサギバンディクート、ビルビ、フクロウサギとも呼ばれ、その長い耳とウサギに似た外見が特徴的です。

分布と形態

ミミナガバンディクートは、かつてオーストラリア大陸の乾燥・半乾燥地帯の広範囲に分布していましたが、現在ではクイーンズランド州西部、西オーストラリア州、ノーザンテリトリーの一部地域にのみ生息しています。

体長はオスで35 - 55cm、メスで29 - 39cm、尾長はオスで20 - 29cm、メスで20 - 28cm。体重はオスで1 - 2.5kg、メスで0.8 - 1.1kg程度です。全身は青灰色の体毛で覆われ、尾は黒く、先端は白いのが特徴です。特に目を引くのは、その名の通り大きく長い耳で、周囲の音を敏感に捉えるのに役立っています。

生態

ミミナガバンディクートは夜行性で、日中はシロアリの蟻塚の下や藪の中に掘った巣穴で過ごします。巣穴は非常に長く、3mに達することもあり、深さは40 - 60cm程度です。時には180cmに達する深い巣穴も確認されています。

食性は雑食性で、昆虫、果実、種子、球根などを食べます。優れた聴覚と嗅覚を駆使して地中に隠れた食物を探し当てます。

繁殖は周年行われ、平均20.4日おきに発情します。妊娠期間は約14日と非常に短く、1回に1 - 2頭（まれに3頭）の幼獣を産みます。幼獣は生後約80日で育児嚢から出て、メスは約150日で性成熟を迎えます。

人間との関係と保護の現状

ミミナガバンディクートは、人為的に移入されたアカギツネやノネコによる捕食、野火による生息地の破壊などにより、生息数を大きく減らしています。かつてはオーストラリア大陸の乾燥・半乾燥地帯の70%以上に分布していましたが、1920 - 1930年代には南オーストラリア州北部、1940 - 1950年代にはニューサウスウェールズ州と南オーストラリア州南部で絶滅したと考えられています。

現在、ミミナガバンディクートはワシントン条約附属書Iに掲載されており、国際的な保護の対象となっています。飼育下繁殖した個体を絶滅地域に再導入する試みも進められています。

また、ミミナガバンディクートが巣穴に果実、種子、球根などを持ち込む生態が、植生の再生に重要な役割を果たしていることが研究によって明らかになっています。ボランティアによる調査マニュアルも作成され、保護活動に役立てられています。

保護区Arid Recovery Reserveでは、外周を金網フェンスで囲った区画を設け、再導入された個体のモニタリングが行われています。2000年にはMonarto Zooから9頭、2003年と2005年には同動物園からそれぞれ8頭と10頭、2004年にはサウスオーストラリア州Thistle Islandから15頭が放たれました。2008年時点での再導入個体数は合計42頭に達しています。

ミミナガバンディクートの保護は、オーストラリアの生態系を守る上で重要な課題です。地道な保護活動と研究によって、ミミナガバンディクートが再び広大な砂漠を駆け巡る日が来ることを願います。

参考資料

* Pavey, C (2004). Recovery plan for the Greater Bilby, Macrotis lagotis, 2005-2010. Northern Territory Department of Infrastrucuture, Planning and Environment, Darwin

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