ミュルーズの戦い (1674年)

ミュルーズの戦い (1674年)

ミュルーズの戦いは、1674年12月29日、仏蘭戦争におけるテュレンヌの冬季戦役中に発生しました。この戦いは、テュレンヌ率いるフランス軍が、冬営中の神聖ローマ帝国軍を奇襲し勝利を収めたことで知られています。

背景

仏蘭戦争の原因

仏蘭戦争は、フランス王ルイ14世の栄光を求める野心と、ネーデルラント継承戦争におけるオランダの裏切りに対する報復という2つの要因によって引き起こされました。当初、オランダはフランスの同盟国でしたが、ルイ14世の領土拡大政策に反発し、イングランド、スウェーデンと三国同盟を結び、フランスの拡張を阻止しようとしました。ルイ14世は三国同盟の圧力に一時的に譲歩しましたが、その後、資金力を用いてスウェーデンとイングランドを同盟から離脱させ、1672年にオランダへの侵攻を開始しました。しかし、オランダは侵攻を食い止め、神聖ローマ帝国などが対仏戦争に参戦する事態となりました。

1674年の戦役は主にオランダで行われましたが、神聖ローマ皇帝レオポルト1世はアルザスに第二の戦線を開設しようと試みました。帝国元帥アレクサンドル・ド・ブルノンヴィルは、9月にストラスブールからライン川を渡りアルザスに侵攻しました。10月4日、テュレンヌはエンツハイムの戦いで帝国軍を攻撃しましたが、決定的な勝利を得ることはできませんでした。しかし、ブルノンヴィルは1674年の戦役を終結させ、コルマール付近で冬営に入ることを決定しました。ブルノンヴィルはそこでブランデンブルク選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムの軍勢と合流しました。

テュレンヌの冬季戦役

当時の軍隊は通常、冬季の戦役を避けていましたが、テュレンヌは雪が降り始めても攻撃を継続しようとしました。彼は帝国軍の側面を通り南へ進み、ヴォージュ山脈を隠れ蓑にするなど、戦略を駆使して自軍の行軍とその目的を隠蔽しました。12月27日、テュレンヌはヴォージュ山脈の南側にあるベルフォールに到着しました。

戦闘の経過

テュレンヌがベルフォールに到着したことは、帝国軍にとって予想外の出来事でした。彼は直ちにアルザスへの侵攻を企図しましたが、食糧の調達が必要となり、フランス軍の進軍は一時的に停止しました。捕虜の尋問により、帝国軍とその同盟軍がコルマールとアルトキルシュに集結していることが判明しました。テュレンヌはコルマールとアルトキルシュの軍勢の間に強行的に割り込もうとし、当時スイス盟約者団と連合していたミュルーズという自由都市を経由することにしました。彼は騎兵3千のみを率いて進軍しましたが、少数の歩兵が可能な限り迅速にその後に続くことになりました。

ブルノンヴィルは、イル川を維持することで自軍が集結する時間を稼ごうとしました。フランス軍の進軍が遅れたため、帝国軍の前衛がテュレンヌの到着に先んじてミュルーズを占領することに成功しました。この前衛は、ヘルマン・フォン・バーデン＝バーデン率いる騎兵5千以上の派遣軍であり、アルトキルシュから北上し、コルマールへ向かっていました。テュレンヌはミュルーズ近郊のイル川に到着すると、モントーバン侯爵ルネ・ド・ラ・トゥールに騎兵2個大隊による偵察を命じました。テュレンヌはモントーバンの後を追って進軍し、両者が合流した際には、敵軍2個大隊が川近くに展開しており、さらに5個大隊が支援に駆けつけていました。

川が浅く渡河可能であったため、テュレンヌはモントーバンに最前衛を攻撃するよう命じました。テュレンヌと帝国軍は互いに増援を投入したため、戦闘はすぐに激化しました。テュレンヌは右翼に大部隊を配置し、騎兵にトランペットやシンバルを鳴らすことで、フランス軍全軍が到着したかのような錯覚を帝国軍に与えました。帝国軍の胸甲騎兵が突如ミュルーズへ逃走を開始すると、帝国軍全体が混乱し撤退を始め、一部はスイスのバーゼルへ向かって逃走しました。テュレンヌはモントーバンが捕虜になるなど、約60名の兵士を失いました。帝国軍の損害については資料によって異なっていますが、少なくとも300名以上であったとされています。

戦いの後

テュレンヌはベルフォールにいる本隊へ帰還しました。フランス軍は1月上旬に進軍を再開する準備を完了しました。テュレンヌは帝国軍が駐屯するコルマールへ進軍し、その近郊で行われたテュルクハイムの戦いで決定的な勝利を収め、帝国軍をアルザスから駆逐しました。

現代のミュルーズは10万人以上の人口を擁する都市であり、1674年の戦いの戦場は都市の一部となっています。

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