ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク

『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』は、ザ・バンドが1968年に発表した記念すべきデビュー・アルバムです。当時、サイケデリック・ロックが隆盛を極める音楽シーンにおいて、彼らは異彩を放つサウンドで独自の地位を確立しました。

このアルバムの特徴は、R&Bやゴスペルといった黒人音楽と、カントリーやトラディショナル・ソングといった白人音楽を融合させた点にあります。メンバーたちは、それぞれのルーツミュージックを昇華させ、ジャンルを超越した音楽を作り上げました。

アルバム・タイトルにある「ビッグ・ピンク」とは、ザ・バンドとボブ・ディランが一時的に共同生活を送っていた家の通称です。その家の壁がピンク色に塗られていたことに由来します。しかし、アルバムのレコーディングは「ビッグ・ピンク」で行われたわけではなく、ニューヨークとロサンゼルスのスタジオで行われています。

プロデューサーのジョン・サイモンが、メンバーに目指すサウンドを尋ねたところ、全員が「ビッグ・ピンクの地下室のようなサウンド」と答えたというエピソードが残っています。その「ビッグ・ピンク」は、所有者は変わったものの、現在も当時の外観を保ったまま現存しています。

アルバムからシングルカットされた「ザ・ウェイト」は、全米63位、全英21位を記録。映画『イージー・ライダー』のサウンドトラックにも使用されましたが、権利上の問題から、サウンドトラック盤ではスミスというバンドによるカバーバージョンが収録されています。

このアルバムは、音楽界にも大きな影響を与えました。ジョージ・ハリスンは、このアルバムを大量に購入し、周囲に「これは傑作だ」と薦めたという逸話も残っています。

2018年には、発売50周年を記念したエディションがリリースされました。オリジナルアルバムに加え、未発表音源やライブ音源などを収録した豪華な内容で、改めてその魅力が再評価されています。

収録曲は以下の通りです。

Side 1
怒りの涙 - Tears of Rage (Bob Dylan, Richard Manuel)
トゥ・キングダム・カム - To Kingdom Come (Robbie Robertson)
イン・ア・ステイション - In a Station (Manuel)
カレドニア・ミッション - Caledonia Mission (Robertson)
ザ・ウェイト - The Weight (Robertson)

Side 2
ウィ・キャン・トーク - We Can Talk (Manuel)
ロング・ブラック・ベール - Long Black Veil (Marijohn Wilkin, Danny Dill)
チェスト・フィーバー - Chest Fever (Robertson)
悲しきスージー - Lonesome Suzie (Manuel)
火の車 - This Wheel's on Fire (Dylan, Rick Danko)
* アイ・シャル・ビー・リリースト - I Shall be Released (Dylan)

『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』は、時代を超えて愛されるザ・バンドの代表作であり、音楽史における重要な一枚として、これからも聴き継がれていくことでしょう。

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