ミルキーピア

『ミルキーピア物語』について

『ミルキーピア物語』は、作家東野司が手がけたユニークなコメディSF小説シリーズです。略称として『ミルキーピア・シリーズ』とも称され、1987年に発表された『京美ちゃんの家出』から1995年の『史上最大のメリークリスマス』までの12作品から構成されています。全作は主に『SFマガジン』に掲載され、カラフルな表紙や挿絵は横山えいじによるものです。シリーズには単行本化されていない作品も存在しますが、その魅力は色褪せることなく、多くの読者に親しまれています。

この作品群では、システムエンジニアリングやネット通信、仮想現実などのテクノロジーが背景に設定され、ミルキーピアのメンバーである片山秀人や鳴琳などがさまざまな冒険を繰り広げます。たとえば、擬似人格ソフト同士の恋愛を描く『京美ちゃんの家出』、コンピュータデータのタイムトラベルをテーマにした『8ビットの魔術師』、そして電脳空間での密室推理を展開する『消えた十二支の謎』など、各作品には独自の視点やテーマが込められています。

技術的な側面については、現在の視点から見ると若干時代遅れの印象を受けるかもしれません。しかし、第一作が書かれた当時、一般の人々が利用できるコンピュータ通信はパソコン通信に限られていたことを考慮すると、その先見性には驚かされます。シリーズの続編ではないが、同じ作品世界に属する『よろず電脳調査局ページ11』シリーズも存在し、片山秀人や鳴琳の名前が登場します。

主なキャラクター

シリーズには魅力的なキャラクターが数多く登場します。主人公の片山秀人は、ミルキーピアの唯一の男性社員で、ネット上のバーチャル空間に自分の意識を移す能力を持っています。彼は優れたプログラマーでもあり、人気ソフト『京美』を制作しました。彼の特技である「ネット潜り」は、多くの場面で役立っています。

一方、ミルキーピアの女社長であるヨネコは、システムエンジニアとしても非常に優れた実力を誇り、お色気満載のキャラクターです。彼女の親友であり、経理を担当する麻矢さんは、ちょっと怖い関西弁の姉御です。そして、秀人の唯一の後輩である夏鳴琳もネット潜りの特技を持つキャラクターとして登場します。

この作品群に登場する擬似人格ソフトたちもユニークです。京美Ver 1はパーソナルアイドルとして人気を集めるソフトで、共演者として医療用擬似人格ソフトの三太郎との感情的なやり取りが描かれます。Ver 2はその後継ソフトで、通常はネットアイドルとして人気ですが、時には秀人たちのサポート要員としても活躍します。また、聖哉というアイドルソフトはミルキーピアの人気商品となっています。

物語の中には、意識決定支援ソフトとして登場する根回しくんや、秀人の職場環境を描くシーサイドキララ社長の神戸光俊、さらには鳴琳の恋人ユエ・ホン・ドクもキャラクターとして厚みを加えます。これらのキャラクターたちが、作品を通じて織り成す人間関係や冒険は、読者を楽しませる大きな要素となっています。

作品リスト

2021年現在、アドレナライズから電子書籍版が公開されています。未単行本化の作品も含め、全作の購入が可能です。具体的な書名としては以下の通りです：

• - 京美ちゃんの家出（ISBN 4150302928）
• - つかのまの間奏曲（インターミッション） （ISBN 415030324X）
• - ジュリエット作戦 （ISBN 4150303290）
• - 8ビットの魔術師 （ISBN 4150303363）
• - 京美対京美 南欧の大決闘（上・下） （ISBN 4150303568 / 4150303576）
• - 消えた十二支の謎 （ISBN 4150303762）
• - 成層圏スタジアム （ISBN 4150303835）

そして、読み切り作品や伝説的な短編もいくつか含まれています。

『ミルキーピア物語』は、ただのコメディSFに留まらず、技術や人間関係を通じて深いテーマを探求しています。これからも多くの読者に愛され、楽しめることでしょう。

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