ミルクイ

ミルクイ（海松食）とは

ミルクイ（学名：Tresus keenae）は、バカガイ科に属する大型の二枚貝です。別名ミルガイ、ミルクイガイとも呼ばれ、冬の季語としても用いられます。

形態

殻長は15cmほどで、殻の表面は黄褐色の殻皮で覆われています。最大の特徴は、体の後方にある大きく発達した水管です。この水管は太く、殻の中に完全に引っ込めることはできません。

水管の表面は黒い皮で覆われており、海藻のミルが付着していることがあります。この状態で水管を縮める様子が、「ミルを食べている」ように見えることが名前の由来です。名前の由来となった「海松」は、密生した海藻が松葉のように見える様子からきていますが、実際にはミル以外の海藻が付着することもあります。

生態

ミルクイは、浅瀬の砂泥底に深い穴を掘って生息します。日本全国の内湾、特に瀬戸内海、三河湾、東京湾などに多く分布しています。食性は、水中のプランクトンや泥の中の有機物を摂取します。天敵はカニ、ヒトデ、魚類などです。寿命は正確には分かっていませんが、10年から15年以上生きる個体もいると推定されています。

食用

食用にするのは主に大きく発達した水管で、刺身や寿司ネタ、塩焼きなどで食されます。水管以外の部位は一般的に食用とされませんが、食べられないわけではありません。かつては日本各地で獲れましたが、近年漁獲量が減少し、高級食材となっています。現在、市場に流通しているミルクイの多くは中国産や韓国産です。

代用食材

ミルクイの代用としてよく用いられるのが、ナミガイ（通称：白みる）やアメリカナミガイです。これらはミルクイとは別の種類で、キヌマトイガイ科に属します。ナミガイは東京湾、播磨灘、周防灘、三河湾などが主な産地で、殻付きの活きた状態で販売されています。アメリカナミガイは主にカナダから輸入され、回転寿司などの「みる貝」として利用されることが多いです。

ミルクイは、これらのナミガイ類と区別するために「本ミル」（稀に「黒ミル」）と呼ばれることもあります。しかし、20世紀末以降、市場での流通量はナミガイ類の方が圧倒的に多くなっています。もっとも、代用品とされる白みるも大変美味な貝類であることに違いはありません。

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