ミロ美術館

ミロ美術館は、スペイン・バルセロナのモンジュイックの丘に建つ現代美術館です。この美術館は、ジョアン・ミロの作品を専門に収蔵・展示しており、個人美術館としては世界最大規模を誇ります。地元の人々からは「ミロからの贈り物」として親しまれています。

設立の経緯

ミロ美術館は、ジョアン・ミロ自身が1968年に構想を始め、親友であるジョアン・プラッツと共に設立されました。ミロは、若い芸術家たちが現代美術に挑戦できるような新しい施設を作ることを望んでいました。また、彼の友人たちは、ミロの作品が故郷のバルセロナに美術館として存在しないことを残念に思っていました。建築家のホセ・ルイ・セルトは、この美術館の設計を無償で担当し、建物へのアクセスを容易にすると共に、来館者が自然な流れで内部を巡れるよう、中庭やテラスを設けました。館内は外光が十分に差し込み、開放的な雰囲気に包まれています。

1975年6月10日、ミロ美術館は開館しました。初代館長には、セルト同様にミロの親友であったジョアキン・ゴミスが就任し、ミロ自身も役員の一員として名を連ねました。美術館は、単なる展示施設としてではなく、新しい視点を提供し、バルセロナの人々が文化遺産に触れるための場となることを目指しました。

美術館の特徴

ミロの当初の構想に従い、若い実験的なアーティストを支援するための「エスパイ13」という部屋が設けられています。1986年には美術館の増築が行われ、講堂と図書館が追加されました。現在では、ミロの作品を展示するだけでなく、現代美術の活動拠点としても機能しています。

ミロの作品

美術館のコレクションには、ミロ自身が寄贈した作品が多数含まれており、特に初期と晩年の作品が豊富です。代表的な作品には以下のものがあります。

《ヒバリの翼…》 (1967年)
《サン・フアン・ウエルタの隠れ家》 (1917年)
《ペドラルベス通り》 (1917年)
《少年の肖像》 (1919年)
《絵画（白い手袋）》 (1925年)
《空間の炎と裸婦》 (1932年)
《人物》 (1934年)
《排泄物の山を前にした男と女》 (1935年)
《階段を昇る裸婦》 (1937年)
《No》 (1937年)
《朝の星》 (1940年)
《バルセロナ・シリーズ》 (1944年)
《ダイヤモンドは夕暮れに微笑む》 (1947年-1948年)
《鳥の愛撫》 (1967年)
《蒼天の金》 (1967年)
《孤独な細胞への白い絵画》I, II, III (1968年)
《太陽の前の人物》(1968年)
《月光のカタロニア農民》(1968年)
《都市へのモニュメントのプロジェクト（月、太陽、星）》(1968年)
《人物》 (1970年)
* 《1968年5月》 (1968年-1973年)

その他のコレクション

美術館の所蔵品は1万点を超え、ミロの作品以外にも、ピーター・グリーナウェイ、エドゥアルド・チリーダ、ルネ・マグリット、マーク・ロスコ、アントニ・タピエス、アントニオ・サウラの作品も収蔵されています。また、アレクサンダー・カルダーの作品である《4枚の翼》と、液体水銀を用いた《水銀の泉》も所蔵しています。水銀は有毒であるため、《水銀の泉》はガラスで保護されています。この作品は、1937年のパリ万博スペイン館でピカソの《ゲルニカ》やミロの《刈り入れ人》と共に展示され、水銀鉱床地かつスペイン内戦の激戦地であったアルマデンを暗示する作品として、共和派の象徴と見なされました。

QRペディアの導入

ミロ美術館では、作品に関する多言語のWikipedia記事を来館者が閲覧できるよう、QRペディアを導入しています。これにより、作品に対する理解を深めることが可能です。

まとめ

ミロ美術館は、ジョアン・ミロの芸術と精神を体現する場所であると同時に、現代美術の発展を支える重要な拠点です。その建築美、コレクションの質、そして革新的な取り組みを通して、世界中の芸術愛好家を魅了し続けています。

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