ミーカート

ミーカートとは

ミーカート（Mīqāt）は、イスラム教の重要な信仰行事、ハッジを行う際に巡礼者が特定の場所でイフラームに着替えることが求められる地点を指します。この制度は、巡礼における神聖さを強調し、しっかりと儀式に臨む姿勢を奨励する意味合いを持っています。主なミーカートは、以下の6箇所に設定されています。

ミーカートの主要6箇所

1. ズー・ル＝ハリーファ (مسجد ذي الحليفة)
メディナから南に11kmの位置にあり、メディナから出発する巡礼者にとってのミーカートです。ここは、預言者ムハンマドが最後の巡礼の際にこの地から聖域に入ったとされ、その重要性が強調されています。

2. アル＝ジュフファ (الجحفة)
メッカから北に187km、ラービクの東郊に位置し、シリア、エジプト、北アフリカからの巡礼者が使用するミーカートです。

3. ザート・イルク (ذات عرق)
メッカの東北部94kmの地点で、主にイラクからの巡礼者にとってのミーカートとなります。

4. カルン・ル＝マナーズィル (قرن المنازل)
メッカの東96kmに位置し、サウジアラビアの東部やクウェート方面からの巡礼者が訪れるミーカートです。

5. ヤラムラム (يلملم)
メッカの南東54kmにあり、主にイエメン方向からの巡礼者が使用します。

6. ワーディー・マフリム (وادي محرم)
現在の交通手段の発達により、海路や空路を利用して聖域に訪れる場合も多くなりました。特に、海路でメッカの港であるジッダに到着する際には、アッ＝ジュフファの緯度に達した時点でイフラームに着替える必要があります。また、空路の場合は出発地点の空港内の指定された場所で着替えることが一般的です。

ハッジとイフラームの重要性

ミーカートのシステムは、巡礼者が移動中に神聖さを維持するための重要な役割を果たしています。このことは、巡礼が社交的な行為であるだけでなく、個々の信仰の表れでもあることを示しています。巡礼者がイフラームに着替える際は、心身ともに神の前に出る準備を整えることが求められ、この儀式を通じて清浄さや謙虚さを再認識する機会となります。

ハッジはイスラムの五大信仰の一つであり、世界中の数百万人が毎年この巡礼を行います。それは、宗教的であるだけなく、文化的にも重要な役割を担っており、信者たちが一堂に会し、信仰を共有する場でもあるのです。

参考文献

• - 坂本勉『イスラーム巡礼』（岩波新書、2000）ISBN 4-00-430677-9

以上がミーカートについての概略ですが、巡礼を行う際にはこのシステムを理解しておくことが重要です。

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