イフラーム

イフラームの概念とその重要性

イフラーム（アラビア語: إحرام、ラテン文字転写: iḥrām）とは、ムスリムとムスリマがハッジやウムラといった巡礼を行う際に求められる特別な状態を指します。この状態は、巡礼者が神聖な行為にふさわしい心のあり方を持つことを示し、また同時に物理的な制約を伴います。イフラームを示すためには、特別に用意された「イフラーム布」と呼ばれる2枚の白布（縫い目のないもの）を身にまとわなければなりません。このイフラーム布は、キリスト教の白い祭事衣のようなもので、全ての人が平等であるというイスラム教の教えを象徴しています。

イフラーム布の着用

イフラームは、ミーカートと呼ばれる定められた場所で着替える必要があり、空路で巡礼に行く場合は、出発地の空港でも着替えることが求められます。女性については、イフラーム布への着替えが義務ではありませんが、体の他の部分は全て隠す必要があります。顔を隠すことは禁止されているため、ブルカやニカブのような服装は適切ではありません。

イフラーム中の行動規範

イフラームの状態では、身体やイフラーム布に香料をつけたり、縫い目のある服を身に着けることが禁止されています。また、サンダルにも縫い目があってはいけません。さらに、汚れたイフラーム布や不衛生な状態での行動は厳しく禁じられ、もしイフラーム布が汚れた場合、再度新しい布に着替えなければなりません。これは巡礼の体験が神聖であることを強調しています。

衛生と行動の制限

巡礼中は、物理的な清潔を保つことが求められます。男性は髪やひげを整えることを控え、女性も同様に清潔である必要があります。さらに、巡礼中には性行為や乗り物の利用、悪態をつくことは禁じられています。また、動物を殺すことや口論、誓いを立てることなど、日常的に許可されている行為においても制限があります。特に、男性が女性を見ることを避けることや、女性が目立つ服装を控えることも求められます。

清潔と精神的な集中

巡礼の最中は、軽薄さや粗雑さを忘れ、神への意識を高めることが重要とされています。これは、イフラームの状態を維持することが、神聖な行為の一部であると考えられているからです。無香料の石鹸は使用可能ですが、香料入りのものは避けなければなりません。普段の生活から離れ、神のみを意識することで、心身共に聖なる状態に近づくことを目指します。

空路利用におけるイフラーム

遠方から巡礼のために空路を利用する場合、出発地の空港でもイフラーム布に着替えることが必要です。このため、一部のイスラム教国の空港には、イフラーム布への更衣スペースが設けられています。これにより、旅立つ前に神聖な状態に身を置くことができ、巡礼の準備を整えることができます。

まとめ

イフラームはただの衣服ではなく、巡礼の精神と行動規範を象徴する大切な概念です。心を清め、神聖な状態で巡礼に臨むことで、ムスリムは神との関係をより深めることが促されます。この重要な行為は、信仰の深さとムスリム同士の平等を示すものなのです。

もう一度検索