ミーソン聖域

ミーソン聖域の概要

ミーソン聖域（Thánh địa Mỹ Sơn）は、古代のチャンパ王国が築いた重要な遺跡であり、ベトナム中部のクアンナム省に位置しています。この地域はヒンドゥー教のシヴァ派を信仰していたチャンパ人の聖地として知られ、聖山マハーパルヴァタを望む谷間に広がっています。ミーソンの歴史は、7世紀から13世紀までに遡り、数多くのチャンパ塔が残されていますが、残念ながらベトナム戦争の際に爆撃を受け、大きな損傷を受けました。

歴史的背景

チャンパ王国はサンスクリット語で「チャンパープラ」と呼ばれる文化圏に属し、他の東南アジアのインド化国家（例えばビルマのシュリークシェートラ、タイのドヴァーラヴァティー、カンボジアのカーンボージャ、インドネシアのシュリーヴィジャヤなど）と同じ背景を持っています。この王国は、現在のベトナム中部沿岸や高原に広がっており、チャンパ人と呼ばれる民族が支配していました。遺跡から見つかった碑文は、古チャム語と呼ばれる言語で、マレー系オーストロネシア語族に属しています。これによって、チャンパ王国の住民が現在のチャム族の祖先であることが示されています。

文化と建築

ミーソン聖域で見られる建築スタイルは、グプタ様式や先アンコール期の影響が色濃く、特に接着剤を使用しない技術によって、建物がいかに巧みに構築されたかを物語っています。この地域周辺の住民であるカトゥ族は、現在でも技術的に高度な木彫りの技術を持つ職人を輩出しています。伝説によれば、チャンパの彫刻家や建築家の多くは、山岳民族から徴用された労働者だったと言われています。

発見と保護

ミーソン聖域は20世紀初頭にフランスの探検者によって再発見され、その後フランス極東学院（EFEO）により修復作業が行われました。しかし、フランス領インドシナ時代には盗掘が進み、多くの貴重な美術品が失われてしまいました。さらにベトナム戦争では、アメリカの空爆により多数の遺跡が破壊の憂き目に遭いました。その後、文化遺産の修復や保護に向けた国際的な努力が続けられ、いくつかの石像はダナンの博物館に移されています。

アクセスと観光

現在、ミーソン聖域を訪れるには、旅行会社が催行するツアーを利用するのが一般的です。ホイアンからはシンカフェやキムカフェなどのツア会社が日帰りツアーを提供しています。また、TNKトラベルなどでは日本語ガイド付きのツアーもあり、日本からの訪問者にも親切です。

世界遺産としての意義

ミーソン聖域はその文化的、歴史的な重要性からユネスコの世界遺産に登録されています。登録基準の一つとして、特定の文化圏における建築技術や都市計画、景観デザインの重要な交流を示していることが挙げられます。さらに、この遺跡は過去の文化的伝統や文明の稀有な証拠であり、その存続は後世に向けた重要な意義を持っています。

ミーソン聖域は、チャンパ王国の歴史を知る上で欠かせない場所であり、訪れることによりその壮大な過去を感じることができるでしょう。

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