ミーターズ

ミーターズは、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズを拠点に活動した、R&Bおよびファンクミュージックの先駆者として知られるバンドです。その独自性あふれるグルーヴとタイトなアンサンブルは、後の音楽シーンに多大な影響を与えました。彼らの代表曲としては、「チキン・ストラット」や「シシー・ストラット」といったインストゥルメンタル曲が広く知られています。

バンドの起源は1960年代中頃に遡ります。鍵盤奏者のアート・ネヴィルが中心となって結成したアート・ネヴィル&ザ・サウンズがその前身です。初期にはアートの兄弟であるアーロンやチャールズも参加していましたが、後に彼らはバンドを離れます。アート、ギタリストのレオ・ノセンテリ、ベーシストのジョージ・ポーターJr.、そして新たにドラマーとしてジョー“ジガブー”モデリストが加わったこの4人編成が、後のミーターズとしての核を形成しました。

レコードデビューに先立ち、メンバーはニューオーリンズの音楽シーンでスタジオミュージシャンとしてその腕を磨きました。特に、アラン・トゥーサンとマーシャル・シホーンが運営していたサンス・レコードでは、専属のスタジオバンドとして多数のレコーディングに関わります。有名なところでは、シンガーのリー・ドーシーの楽曲でバック演奏を務めています。当時のファンクは、ジェームス・ブラウンやスライ・ストーンに代表されるような都会的でワイルドなスタイルが主流でしたが、ミーターズのサウンドは、ニューオーリンズ特有の泥臭さや素朴さが特徴的であると評されることもありました。

正式なレコードデビューは1968年11月、ジョーシー・レーベルからのシングル「Sophisticated Cissy」によって果たされます。翌1969年には、セルフタイトルを冠したファーストアルバム『The Meters』をリリースし、バンドの評価を確立しました。このデビュー間もない時期には、著名なシンガーであったダニー・ホワイトが彼らのツアーマネージャーを務めていました。

1972年にはレコード会社をリプリーズ・レコードへと移籍し、移籍第1弾となるアルバム『Cabbage Alley』を発表します。この時期、彼らはニューオーリンズ音楽の重鎮であるドクター・ジョンとの密接な関係を築き、彼の傑作アルバム『イン・ザ・ライト・プレイス』（1973年）および『デスティヴリー・ボナルー』（1974年）において、全面的な演奏サポートを行いました。

バンドは1975年頃に、アートの兄弟であるパーカッショニストのシリル・ネヴィルをメンバーに迎え入れ、サウンドに厚みを加えます。同年には、名盤として名高いアルバム『Fire On The Bayou』をリリースしました。彼らのライブパフォーマンスは高く評価され、1975年と1976年にはローリング・ストーンズの大規模なツアーで前座を務めるという栄誉を得ています。また、イギリスのシンガー、ロバート・パーマーのアルバムにも演奏で参加するなど、多方面でその才能を発揮しました。

順調にキャリアを重ねているように見えましたが、ミーターズは1977年に一度解散を迎えます。バンドの中心メンバーであったアートとシリルは、他のネヴィル家の兄弟たち（アーロン、チャールズ）と合流し、伝説的なバンド、ネヴィル・ブラザーズを結成して新たな道を歩み始めました。

しかし、ミーターズとしての活動はこれで終わりではありませんでした。1989年のニューオーリンズ・ジャズ＆ヘリテージ・フェスティバルでの非公式なジャムセッションがきっかけとなり、バンドは再結成へと向かいます。この再結成には、オリジナルのドラマーであるジョー・モデリストは参加せず、新たにラッセル・バティストJr.が後任として迎えられました。この新体制のミーターズは、1991年にリリースされたロビー・ロバートソンのアルバム『Storyville』収録曲「Go Back to Your Woods」で共演を果たし、1993年にはこのメンバーで初の来日公演を実現させました。

1994年には、オリジナルメンバーの一人であるレオ・ノセンテリがバンドを離れ、後任としてブライアン・ストルツが加入します。これを機に、バンドは名称をファンキー・ミーターズ（The funky Meters）と改め、活動を継続しました。一方、オリジナルの4人編成によるミーターズ（オリジナル・ミーターズと呼ばれます）も、その後何度か単発的な再結成ライブを行っています。特に、アート・ネヴィルは2006年のオリジナル・ミーターズ再結成後、再びこの編成での活動はしないと語っていましたが、アート以外の3人（ノセンテリ、ポーター、モデリスト）は「ザ・ミーター・メン」名義で活動を続ける中、2011年のボナルー・フェスティバルや2012年のニューオーリンズでの公演など、オリジナル・ミーターズとしてのライブも実現しています。

ファンキー・ミーターズのメンバーも流動がありました。2007年にはブライアン・ストルツが脱退し、アートの息子でネヴィル・ブラザーズやダンプスタファンクで活動するイアン・ネヴィルが加入しましたが、2011年にはイアンが自身の活動に専念するため脱退し、再びブライアン・ストルツが呼び戻されています。このファンキー・ミーターズは、2009年にはフジ・ロック・フェスティバルに出演、その後も2014年、2015年と日本での公演を行っています。

また、オリジナルメンバーのレオ・ノセンテリは、自身のバンドを「ミーターズ・エクスピリエンス」と名付け、ミーターズの楽曲をレパートリーに取り入れた活動を展開しており、2013年、2014年にも来日公演を行っています。

ミーターズとしての長い歴史に終止符が打たれたのは、2019年7月22日でした。バンドの中心人物であり、ニューオーリンズ音楽シーンの巨匠であったアート・ネヴィルの死去に伴い、ミーターズの活動は完全に終了しました。しかし、彼らが残した独創的なファンクサウンドは、今なお多くのリスナーやミュージシャンに愛され、影響を与え続けています。

もう一度検索