ムギラン

ムギランについて

ムギラン（麦蘭、Bulbophyllum inconspicuum）は、日本で広く見られる小型の着生ランとして知られています。この植物は、特に本州、四国、九州の暖温帯常緑樹林に生息し、樹木の幹や岩に根を張りつつ生育します。

特徴

ムギランは、ラン科の多年草に分類される植物で、特有の形状が特徴です。細長い匍匐茎は針金のように硬く、地面に横たわりながらあちこちから根を出します。これに伴い、偽球茎という卵形で緑色の部分が間隔をおいて並びます。したがって、クリエイティブな観点から、この偽球茎の形状が「麦粒」に見立てられ、命名につながったと言われています。

葉は楕円形をしており、その長さはおおよそ1-3cmです。葉の先端は丸みを帯びており、やや肉厚で硬めです。古くなると葉は根元から折れますが、偽球茎は長期間生き残り、水分や栄養を蓄えることができます。そのため、古い部分はしだいに緑色の卵形が並んだような外観になります。

初夏から夏の間にかけては、偽球茎の基部から短い花茎が出現し、通常1つの花が咲きます。この花は黄色っぽく、萼片と側花弁は3-3.5mmと非常に小さく、やや尖った形状で抱え込むように開きます。

生育環境

ムギランは主に本州の宮城県以南や四国、九州に見られ、あたかも周囲の環境に溶け込むように樹木や岩に生息しています。また、他のランの仲間であるマメヅタランと混生することも多く、これも見ることができるポイントです。国外では朝鮮半島の南部に分布し、似た生育環境を好みます。

類似種

この植物に似たものにはミヤマムギラン（B. japonicum）があります。形は似ていますが、ミヤマムギランの方が大きく、葉が細長く、先端がとがっています。また花茎も長く、葉の上に大きく咲く傾向があります。特に花の形状が独特で、上部三弁と唇弁は小さく、下側の二弁は細長く前に突出する特徴があります。

ほかには、別属のオサラン（Eria reptans）も、姿が近いですが、特徴的な匍匐茎がないことが見分けるポイントです。

利用

実用的な利用はほとんどなく、形状や特徴から観賞用として栽培されることもあります。しかし、その鑑賞価値は高くなく、また日本では普通種であるため、採集圧は比較的低い状態です。例外として、ミヤマムギランには斑入り株が発見されたことから、こちらは特に鑑賞価値が高いとされています。

保全状況評価

現在、ムギランは準絶滅危惧（NT）に分類されています。この評価は、2000年のレッドデータブックでは絶滅危惧II類（VU）に位置付けられたものの、その後の評価で現在の状態に至ったものです。元々広範囲に分布しているものの、環境の変化や、人間の活動による影響が懸念されています。

このように、ムギランは日本の植生の中で重要な役割を持つ小型ランですが、その保全が今後の課題となっています。

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