ムラサキオーストラリアムシクイ

スズメ目オーストラリアムシクイ科に属するムラサキオーストラリアムシクイ (Malurus splendens) は、体長約13〜14センチメートルの小鳥です。主にオーストラリアの南西部から内陸部にかけて分布しています。

形態

この鳥は性的二型が顕著です。繁殖期のオスは全身が深い紺色や瑠璃色に輝き、冠羽や耳羽は光沢のある空色、胸部はつややかな紫色で黒く縁取られます。嘴や脚、過眼線から首筋にかけては黒色です。非繁殖期のオスや繁殖に参加しないオスは、風切り羽と尾羽が青い以外は淡い茶褐色で、腹側は白色です。メスは全体的に淡い茶褐色で、風切り羽は褐色、尾羽は青色。淡い紅色のアイリングを持ちます。

生態

強い昆虫食の雑食性で、小さな昆虫を中心に、果実や種子も採食します。群れで生活し、草でドーム型の巣を作ります。繁殖は近縁種に似ており、オスとメスは一生つがいとなりますが、つがい相手以外の複数の個体とも繁殖するため、社会的一夫一妻制ながら性的な関係は多重婚と言えます。通常2～4個の卵を産みます。

求愛行動

オスの求愛には特徴的な行動があります。特に、天敵の鳴き声が聞こえる時にあえて高らかに鳴くことが知られています。研究では、メスが天敵の鳴き声とオスの鳴き声を特定の組み合わせで聞かされると、天敵の声の直後の危機時のオスの鳴き声に強く反応し、声の方向へ鳴き返すことが確認されました。これは、天敵の声で警戒心が高まったメスがオスの声を注意深く聞き、危機感がつがい形成を促すためと考えられています。この行動は、危険を冒す「ハンディキャップ理論」ではなく、天敵の位置や状況を把握した上で、その存在を利用する戦略と見られています。

分類

ルリオーストラリアムシクイと近縁で、その進化史に関する記述はそちらを参照することがあります。本種は4つの亜種に分けられています。

基亜種 M. s. splendens: 西オーストラリア州南西部に分布。
M. s. musgravei: 南オーストラリア州～ノーザンテリトリー南部。風切り羽が黒みがかった青。
M. s. melanotus: クイーンズランド州・ニューサウスウェールズ州内陸部～南オーストラリア州東部。風切り羽が黒い。
M. s. emmottorum: M. s. melanotusの分布北部局所。1999年記載。嘴が短い。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、「低危険種（Least Concern）」と評価されています（Ver. 3.1, 2001）。

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