ムレキシド

ムレキシド（Murexide）についての詳細

ムレキシドは、プルプル酸のアンモニウム塩として知られる化合物であり、紫色の粉末状の物質です。この化合物は大気中でアロキサンチンを高温で加熱したり、酸化水銀を用いて5-アミノバルビツール酸を加熱することにより合成されます。特に、ウォルター・ハートリーは、ムレキシドを純粋な状態で得ることが容易でないことを発見し、新たな合成法を確立しました。この方法では、アロキサンチンを沸騰した無水アルコールに溶解し、気体アンモニアを約3時間通過させて得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させるというプロセスが用いられます。

ムレキシドは、視覚的には赤紫色の粉末であり、水に若干溶ける性質を持っています。溶液の色は、pHによって変化し、強酸性条件下では黄色、わずかに酸性では赤紫色、アルカリ性では青紫色を示します。このような性質から、ムレキシドはさまざまな化学分析や実験において重要な役割を担っています。

この化合物の歴史は古く、1830年代にドイツの化学者であるユストゥス・フォン・リービッヒとフリードリヒ・ヴェーラーがヘビの排泄物からその存在を発見しましたが、その含有量は非常に少なく、染料としての利用法は未確立でした。しかし1850年代には、パリの染色業者であるDepoullyが南アメリカの糞の堆積物から大量にムレキシドを抽出し、これを使って天然繊維を染色することに成功しました。この成果は、次第にイギリスやフランス、ドイツへと広まり、ムレキシドは染料としての地位を確立していきます。

分析化学において、ムレキシドは錯滴定の指示薬として特に有効です。カルシウムイオンに対してしばしば使用される一方で、銅やニッケル、コバルト、トリウム、さらには希土類元素に対しても利用されています。ムレキシドは通常、少量で使用され、1:250の硫酸カリウム混合物として用いることが多いです。

ムレキシドは、カルシウムや希土類金属の測定において比色分析試薬としても利用されており、カルシウム測定において最適なpHは11.3であり、0.2から1.2 ppmの濃度範囲での検出が可能です。また、極大吸収波長は506 nmとされています。さらに、ムレキシドは、メチルレッドと組み合わせて、有機塩素化合物汚染物質に対する音響破壊の促進剤としての潜在的な利用も期待されています。

このように、ムレキシドは歴史的な染料の一種であるとともに、現代の化学や環境技術においても重要な役割を果たす物質です。

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