ムンカルとナキール

ムンカルとナキール：死後の問い質しを行う天使たち

ムンカルとナキールは、イスラーム教において人の死後に現れる二人の天使の名前です。彼らの役目は、亡くなった人の思想や行動に関して問い質すことです。これらの天使は、クルアーンの中には登場しませんが、預言者の伝承（ハディース）には確認できます。この概念は、イスラームにおける死後の評価や、信仰に基づく応報の理論と深く結びついています。

アザーブル・カブル：墓における罰の概念

イスラームにおいて、アザーブル・カブル（アラビア語: ʿadhāb al-qabr、英語での意訳は“the punishment in the tomb”）は、死後の罰の概念を示しています。この考え方は、故人が生前に行った悪行や不信仰に基づいており、クルアーンにはアザーブル・カブルに関する言及が多く見られます。さらに、イスラームには他の宗教と同じく、死後の復活や最後の審判（キヤーマ）の信念があります。

人が死んだ後からキヤーマの到来までの期間、彼の魂にはどのような報いが与えられるかについて、歴史を通じてさまざまな解釈がなされてきました。Wensinck（1960）はこれを三つの異なる観点に分類しています。

第1の死後観

まず第一には、墓地が天国の前庭や地獄への通路として機能しているという考え方です。この考えでは、信仰者の霊魂は天使たちに迎えられ、天国の美しい庭の鳥となって復活の日を待ちます。対照的に、不信仮者は、罰のために訪れた天使たちにより、苦痛を受けるとされています。

第2の死後観

第二の視点では、信仰者のために墓は広がり、不信仰者には狭まると考えられています。墓は死者に質問をし、答えが良ければ報奨が与えられるのです。しかし、罪を犯した者には痛みを伴う罰が待っています。

第3の死後観

第三の観点において、ムンカルとナキールの名前が初めて登場します。この二人の天使が、眠っている死者のもとへやってきて問いかけをします。その内容は信仰に関するもので、信仰者はしっかりとした答えをする必要があるとされています。信仰者が正しい答えをすれば墓は広げられ、反対に不信仮者には拷問が与えられます。

信仰者には7日間、不信仮者には最大で40日間の質問が続くこともあります。このような死後観は、クルアーンやハディースの解釈によって次第に形成されていきました。

ムンカルとナキールの特徴

ムンカルとナキールの特徴として、黒い眼を持つ天使と青い眼を持つ天使であることが挙げられます。この記述は、キリスト教の子羊に似た世界観を反映しているとも言われています。また、Gardetはこの伝説に、死後も霊魂は続くというシンプルな発想や、ネストリウス派キリスト教徒が言う「霊魂の眠り」との関連を指摘しています。

さらにGardetは、これらの観念にユダヤ教の影響を見て取ることができるとも論じています。ムンカルとナキールは、古代の伝承からは直接的には派生しておらず、啓示から数世代後に文献上で明らかになった存在であると考えられています。

イスラームにおいて、これらの天使たちの問いかけは、死後の魂の運命を決定づける重要な瞬間です。この構造は、死後の世界に関する深い信念を反映しており、信者にとっては非常に大きな意味を持っています。

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