ムージャン

プロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏、アルプ・マリティーム県に位置するムージャンは、美しい景観と豊かな歴史を持つ魅力的なコミューンです。カンヌやグラースに近いこの町は、地中海からわずか数キロ内陸に入った場所にありながら、独特の落ち着いた雰囲気を湛えています。特に、国内外の富裕層や著名人が多くの別荘を構える高級住宅地として知られ、画廊や洗練されたレストランが集まる文化的な側面も持ち合わせています。点在する数多くのヴィッラと美しい庭園から「庭園の町」とも称され、その洗練された雰囲気は、しばしば「コート・ダジュールのヌイイ」にたとえられます。また、先端技術産業集積地であるソフィア・アンティポリスの一部もこのコミューンに含まれています。

地理

ムージャンは地中海沿岸から約6キロメートル内陸に位置しています。南に活気あふれるカンヌとル・カネ、北に香水の町グラースがあり、これらの都市に近接していながらも、独自の静けさを保っています。歴史的なルート・ナポレオンとしても知られる国道85号線が町を通り、周辺地域との交通の要衝となっています。さらに、欧州最大級のハイテクパークであるソフィア・アンティポリスの一角を占めており、コミューン面積の約18パーセントがその区域に該当します。

交通

交通アクセスも良好です。ニース・コートダジュール国際空港からは車で約30分と、国内外からの訪問者にとって便利な立地です。また、近隣の主要都市であるカンヌの駅からムージャンまでは、車で15分以内に到着できます。自動車を利用する場合、オートルートA8の42番インターチェンジ（カンヌ-ムージャン）が最寄りとなります。このインターチェンジに隣接するリベラシオン・ラウンドアバウトには、第二次世界大戦時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルの有名なVサイン像が設置されており、フランス、アメリカ、イギリスの国旗に囲まれて訪れる人々を迎えます。

気候と自然環境

気候は典型的な地中海性で、夏は日差しが強く乾燥しており、冬は温暖で比較的乾燥しています。年間降雨量は春と秋に集中する傾向があります。ムージャンの景観は豊かな緑に彩られています。コミューン面積の約半分が森林や緑地で占められており、特にマツやカシ、多様なコニファー類が多く見られます。広大なヴァルマスク森林公園は427ヘクタールもの面積を誇り、散策や自然観察に最適です。また、フォンメルル池は5ヘクタールの広さがあり、アジア原産のハスが水面を飾り、約70種類もの鳥類が生息する貴重な湿地帯となっています。

歴史

ムージャンの名は、ラテン語の「山の砦」あるいは「火の山」を意味する言葉に由来すると考えられています。古くから人の営みがあり、新石器時代後期から銅器時代にかけての定住を示す痕跡がブレギエール洞窟などで確認されています。ローマ時代には少なくとも三つの集落が存在したことが考古学的調査からわかっており、農業や古代の墓地などが発見されています。丘の上に位置する旧市街は中世に形成されました。11世紀にはレランス修道院の所領となり、フランス革命までその統治下にありました。要塞化されたこの町は、度重なる紛争や16世紀の宗教戦争においても比較的被害が少なかったとされています。しかし、18世紀のオーストリア継承戦争の際には、オーストリア・サルデーニャ連合軍による略奪と放火により大きな被害を受けました。その後、一部の土地がカンヌに割譲されるなどの変遷を経て、20世紀半ばからはコート・ダジュールにおける芸術と観光の拠点として発展を遂げ、多くの芸術家や著名人が魅せられる町となっていきました。

町の構成

ムージャンはいくつかの特色ある地区に分かれています。中心となるムージャン・サントルはいわゆる旧市街で、歴史的な石畳の小道に沿って役場、観光案内所、そして高級レストランや画廊が軒を連ねています。ムージャン・エスト地区には学校や医療施設、スポーツ施設、住宅地が広がり、ソフィア・アンティポリスの一部もこのエリアに含まれます。ムージャン・シュド地区は隣接するル・カネ市との境界に面しています。ムージャン・ウェスト地区には小中学校や有名なゴルフ・クラブがあり、閑静な住宅地となっています。最後に、ムージャン・ル・オーは、小さなプロヴァンス風の商店や建物が集まる、村落をイメージして開発された地区です。

信仰と文化遺産

町には歴史的な宗教建築も点在しています。サン・ジャック・ル・マジュール教区教会は11世紀に起源を持ち、度重なる改築を経て現在に至ります。16世紀建造のサン・マルタン教会はフランス革命後に世俗化されました。ノートルダム・ド・ヴィ礼拝堂は、ローマ時代の神殿跡に16世紀に建てられたと伝わり、アイルランドのビール醸造会社ギネス家一族の墓所があることでも知られています。その他、10世紀にさかのぼるサン・バルテルミー礼拝堂や、1618年建造のペニタン・ブラン・ド・サン・ベルナルダン礼拝堂など、歴史を感じさせる建物が多く残されています。

ゆかりの人物

ムージャンは多くの芸術家や著名人に愛された町です。特に、20世紀を代表する画家パブロ・ピカソが晩年を過ごした地として有名です。また、詩人のポール・エリュアール、作家・芸術家のジャン・コクトー、画家のフェルナン・レジェ、写真家・芸術家のマン・レイ、画家のフランシス・ピカビアなど、多くの芸術家がこの地で活動しました。さらに、フランスのフランソワ・オランド元大統領やコートジボワールのアラサン・ワタラ大統領といった世界の要人もここに別荘を所有しています。

ムージャンはドイツのアシュハイム、イタリアのレーリチと姉妹都市提携を結び、国際交流を深めています。

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