ムーヴィング・ウェイヴス

アルバム『ムーヴィング・ウェイヴス』について

『ムーヴィング・ウェイヴス』（Moving Waves）は、オランダのプログレッシブ・ロックバンド、フォーカスが1971年10月に発表した2作目のスタジオ・アルバムです。オランダ版では『フォーカスII』というタイトルでリリースされ、国際版では異なるタイトルがつけられました。このアルバムは、当時の音楽シーンで高く評価され、イギリスとアメリカ、オランダの各国でチャートのトップ10にランクインしました。

バンドの誕生と経緯

フォーカスの起源は1969年にさかのぼります。当初はタイス・ファン・レール（キーボード、フルート、ボーカル）、ハンス・クルフェール（ドラムス）、マーティン・ドレスデン（ベース・ギター）のトリオ「トリオ・タイス・ファン・レール」が活動していましたが、その後、元ブレインボックスのギタリスト、ヤン・アッカーマンが加わることでフォーカスが結成されました。1970年にデビューアルバム『Focus Plays Focus』を発表した彼らは、続けてアッカーマン作の名曲「ハウス・オブ・ザ・キング」を録音しましたが、彼とファン・レールの関係の悪化により、アッカーマンはバンドを離れることとなります。

しかし、レコード会社の意向で、アッカーマンとファン・レールは共にバンドを続けることに同意し、新しいフォーカスが1970年12月19日に初めて公演を行いました。

アルバム制作の背景

『ムーヴィング・ウェイヴス』は、イギリスでのレコーディングにフォーカスし、プロデューサーとしてマイク・ヴァーノンを迎えました。1971年4月と5月の間にロンドンで制作されたこのアルバムには、ヒットシングル「悪魔の呪文」（Hocus Pocus）や、片面をまるごと占める23分の組曲「イラプション」（Eruption）が収録されています。アルバムの特筆すべき点は、インストゥルメンタル曲が焦点となり、ボーカル曲は「ムーヴィング・ウェイヴス」と「悪魔の呪文」などの数曲にとどまっていることです。「ムーヴィング・ウェイヴス」は、インド出身の詩人、イナヤット・カーンの詩にファン・レールが曲をつけた作品です。

「イラプション」の深層

「イラプション」は、オペラ『エウリディーチェ』にインスパイアされた作品で、オルペウスとエウリュディケーの物語を基にしています。この組曲は、バンドのコンサートでは40分にも及ぶ演奏時間があったと言われており、ファン・レールが中心となって作曲された小品が組み合わされ、実質的なメイン曲として展開されています。その中でも「トミー」という曲は、オランダのプログレッシブ・ロックバンドであるソリューションが後に発表した曲の改作で、サクソフォン奏者トム・バルラーゲのソロが起源となっています。

商業的成功と評価

アルバム『フォーカスII』は、リリースの直後から高評価を得て、オランダの「アルバム・トップ100」で初登場8位を記録し、最終的には4位に達しました。国際版の『ムーヴィング・ウェイヴス』は、イギリスの全英アルバムチャートで初めて登場し、最高2位にまで上昇した後、アメリカのBillboard 200でも8位を記録しました。
シングル「悪魔の呪文」は、Billboard Hot 100で最高9位にランクインし、その影響力を証明しました。また、音楽雑誌『Q』と『モジョ』が選出した「コズミック・ロック・アルバム40」でも評価され、24位に名を連ねています。

結論

『ムーヴィング・ウェイヴス』は、フォーカスの音楽的進化を示すアルバムであり、当時のプログレッシブ・ロックシーンにおける重要な位置を占めています。独特のスタイルと革新的なアプローチが評価され、音楽史に名を刻む作品となりました。

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