メイド・イン・ザ・ダーク

ホット・チップの通算3作目となるスタジオアルバム『メイド・イン・ザ・ダーク』（Made in the Dark）は、2008年2月4日にイギリスで、翌2月5日にアメリカでリリースされました。この作品は、彼らがそのキャリア初期から培ってきたユニークなエレクトロニック・サウンドと、ポップミュージックへの鋭い感性を融合させた一枚として広く認知されています。

前作までの評価をさらに高める形で発表された本作は、バンドの知名度を飛躍的に向上させるきっかけとなりました。特に、アメリカのビルボード誌が発表するチャートの一つで、新人やブレイク前のアーティストが対象となる「トップ・ヒートシーカーズ」部門で1位を獲得したことは、彼らが北米市場においても確かな支持を獲得しつつあることを示す重要な指標となりました。

アルバムには、多様な音楽スタイルを持つ楽曲が収録されています。エネルギッシュなダンスチューンから、内省的で叙情的なバラードまで、その音楽的な幅広さは本作の大きな特徴です。代表的な楽曲としては、キャッチーでダンサブルな「Ready for the Floor」があり、シングルカットされヒットを記録しました。また、タイトル曲である「Made in the Dark」は、アルバムの雰囲気を象徴するような、どこか物憂げで美しい楽曲です。

通常盤のトラックリストは以下の13曲で構成されています。

"Out at the Pictures" – 4:26
"Shake a Fist" – 5:11
"Ready for the Floor" – 3:52
"Bendable Poseable" – 3:46
"We're Looking for a Lot of Love" – 4:43
"Touch Too Much" – 4:05
"Made in the Dark" – 3:00
"One Pure Thought" – 4:53
"Hold On" – 6:20
"Wrestlers" – 3:45
"Don't Dance" – 4:42
"Whistle for Will" – 2:23
* "In the Privacy of Our Love" – 2:52

これらの楽曲は、ホット・チップならではの実験精神と、聴き手を惹きつけるポップなメロディセンスが見事に調和しています。

リリース形態によっては、追加コンテンツも豊富に用意されました。例えば、日本盤にはボーナストラックとして「Bubbles They Bounce」(5:53)と「My Brother Is Watching Me」(3:49)が特別に収録されています。また、iTunesで配信されたデラックス・バージョンには、「Touch Too Much」と「Hold On」のリミックスバージョン（Fake Blood Remix, Switch LDN Remix, Ewan Pearson Remix）に加え、「Wrestlers」のビデオや、バンドのウェストコーストツアーに密着したドキュメンタリー映像が収録され、デジタルならではの充実した内容となっていました。

さらに、一部のスペシャル・エディションにはボーナスDVDが付属し、ライブパフォーマンスの映像が収められました。これには、Melt!フェスティバルでの「Shake a Fist」、「And I Was a Boy from School」、Electric Ballroomでの「Hold On」、グラストンベリー・フェスティバルでの「One Pure Thought」、「Over and Over」といった代表曲のライブ映像が含まれており、バンドのパワフルなライブアクトを垣間見ることができます。

『メイド・イン・ザ・ダーク』は、その音楽的な完成度の高さと商業的な成功により、ホット・チップのディスコグラフィーにおいて非常に重要な位置を占める作品となりました。多様なサウンドを取り込みつつ、バンド独自の個性を確立したこのアルバムは、彼らが世界的なアーティストとしての地位を確立する上で決定的な役割を果たしたと言えるでしょう。

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