メガウイルス綱

2019年、ウイルスの分類体系に新たな「綱」として「メガウイルス綱（Megaviricetes）」が加わりました。

この分類に含まれるウイルスは、発見当初からその常識外れのサイズから「巨大ウイルス」と呼ばれ、従来のウイルス概念を大きく変える存在として研究者の注目を集めています。

特徴

メガウイルス綱に属するウイルスの最大の特徴は、その物理的な大きさとゲノムの巨大さです。一般的にウイルスのサイズは数百ナノメートル以下ですが、巨大ウイルスはマイクロメートルオーダーに達することがあり、これは一部の小型細菌に匹敵するか、それを超える場合もあります。

また、ゲノムDNAのサイズも他のウイルスと比較して圧倒的に大きく、数百万塩基対にも及び、数千個の遺伝子を保有しています。特筆すべきは、自己の遺伝子を複製・転写・翻訳するための遺伝子や、宿主との複雑な相互作用に関わる遺伝子など、従来のウイルスには見られない、細胞性生物に近い機能を持つ遺伝子を多数持っている点です。

起源と進化

このような複雑な構造と巨大なゲノムを持つことから、巨大ウイルスが発見された当初は、かつて独立栄養生物だったものが寄生生活を送るうちに退化した姿ではないか、という「退化説」も唱えられました。しかし、その後の遺伝子解析などの研究が進展し、2020年時点では異なる説が有力視されています。現在の有力説では、比較的ゲノムサイズの小さかった典型的なウイルス（例えばテクティリウイルス綱のようなもの）が、ポリントンと呼ばれる特殊なトランスポゾン（ゲノム内を移動するDNA配列）などを介して、周囲のゲノム情報を取り込みながら徐々に巨大化し、現在の姿に進化したという考え方が支持されています。これはウイルスの進化経路に新たな視点をもたらす発見です。

分類

メガウイルス綱は、2019年の分類提唱時に以下の目と科に分類されました。

アルガウイルス目（Algavirales）
ピコドナウイルス科（Phycodnaviridae）
イミテルウイルス目（Imitervirales）
ミミウイルス科（Mimiviridae）
ピマスコウイルス目（Pimascovirales）
アスコウイルス科（Ascoviridae）
イリドウイルス科（Iridoviridae）
マルセイレウイルス科（Marseilleviridae）

巨大ウイルスの発見と研究は、ウイルス学だけでなく、微生物学や進化生物学においても、生命の定義や多様性、進化のメカニズムについて再考を促す重要な手がかりを提供しています。

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