メズドラ

ブルガリア北西部に位置するメズドラは、ヴラツァ州に属する町であり、同名の基礎自治体の中心地でもあります。この町は、国内を流れる主要河川の一つであるイスカル川の左岸に面しており、バルカン山脈を流れるイスカル川が形成する壮大な渓谷の北側に広がっています。

メズドラ周辺の土地には、太古の昔から人類が生活していた痕跡が確認されていますが、メズドラという集落自体は近代に至るまで極めて小規模なものでした。例えば、19世紀末の記録を見ると、1881年の国勢調査ではわずか86人が暮らす村に過ぎず、その後も人口は減少の一途をたどり、1888年にはさらに減って76人となっていました。

この寂れた状況に転機が訪れたのは、1893年にソフィアとロマンを結ぶ新しい鉄道路線の建設が始まったことです。鉄道工事のために各地から多数の労働者が集結し、それに伴い、生活に必要な基盤整備（インフラ）も急ピッチで進められました。そして、1897年2月20日に待望の鉄道が開通すると、メズドラは主要な鉄道路線の結節点としての役割を持つようになり、これ以降、村の人口は一転して増加に転じました。その後の発展は目覚ましく、1900年には人口が311人に増加し、さらに20年後の1920年には1015人に達するなど、急速な成長を遂げたのです。

公式に町として認定されたのは1950年8月31日ですが、実はそれ以前から、西ヨーロッパで専門教育を受けた建築家たちの手による建物が次々と建設されており、すでに近代的な町の雰囲気を漂わせていました。鉄道による発展が、メズドラを単なる集落から、地域の中核となる町へと変貌させたのです。

現代のメズドラはおよそ1万3千人が暮らす町であり、その地理的な利点を活かして、現在でもブルガリア国内の鉄道網において非常に重要な位置を占めています。ブルガリアの首都ソフィアから国内の北部および西部へと向かう鉄道路線の重要な交点として機能しており、また、首都ソフィアと、国内有数の規模を誇り黒海に面した主要港湾都市であるヴァルナを結ぶ幹線も、このメズドラを経由しています。鉄道網の要衝であることは、物流や人の移動において、この町が果たす役割の大きさを物語っています。

町の経済を支える主な産業としては、地元で採れる豊富な石材を利用した加工業が挙げられます。建築や土木工事に不可欠な石材は、この地域の重要な資源です。また、建築に欠かせないれんがの生産も盛んに行われています。さらに、ビール醸造も古くから行われており、地元の特産品の一つとなっています。

行政区分としては、メズドラ基礎自治体（Община Мездра）の中心を担っており、周囲の複数の集落を管轄しています。国際交流にも積極的で、イタリアのマンモラと友好都市関係を結んでいます。

イスカル川の渓谷に位置し、鉄道によって劇的な発展を遂げたメズドラは、ブルガリア北西部における交通、産業、そして行政の中心として、今日もその役割を果たし続けています。

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