バルカン山脈

バルカン山脈：歴史と自然が織りなす景観

バルカン山脈（バルカンさんみゃく）、またはスタラ・プラニナは、バルカン半島東部に位置する山脈です。ブルガリア語とセルビア語で「古い山」を意味するこの山脈は、ブルガリアとセルビアの国境から東へ約560キロメートルにわたって伸び、黒海のエミネ岬にまで続いています。

名称の由来と歴史

かつてはハイモス山と呼ばれていました。ハイモスはトラキア語で「山脈」を意味する「saimon」に由来すると考えられています。その他にも、アエモン、ハイミモンス、ヘム、エムスなど、さまざまな呼び名が存在します。

バルカン山脈は、681年のブルガリア建国以来、ブルガリアにとって特別な場所でした。第一次ブルガリア帝国にとっては、東ローマ帝国との国境であり、天然の要塞として機能しました。リシュ峠の戦いやプリスカの戦いなど、ブルガリア帝国と東ローマ帝国の数々の戦いの舞台となりました。オスマン帝国支配下では、多くのハイドゥクがこの山脈に隠れ家を築き、独立運動の拠点としました。

地理

地質学的には、バルカン山脈はアルプス・ヒマラヤ造山帯の一部を成す新しい山脈です。大きく東西に伸びる主部と、そこから北西方向に伸びる前バルカンに分けられます。山脈はおよそ30の山塊から構成され、西バルカン山脈、中央バルカン山脈、東バルカン山脈の3つの部分に分けられます。

西バルカン山脈: セルビア国境からアラバコナク峠まで。
中央バルカン山脈: アラバコナク峠からヴラトニク峠まで。最高峰のボテフ峰（2,376メートル）があります。
東バルカン山脈: ヴラトニク峠からエミネ岬まで。全体的に標高が低いのが特徴です。

バルカン山脈は分水嶺を形成しており、北側の川はドナウ川へ、南側の川はエーゲ海へと流れています。ブルガリア最長のイスクル川は、山脈を横切って流れています。山脈には多くの峠があり、主要な道路や鉄道が通過しています。

動植物相

バルカン山脈は、多様な動植物相を有しています。コジャ・ステナ自然保護区にはウスユキソウが生息し、中央バルカン国立公園には急峻な崖や豊かな植生が見られます。ヒグマ、オオカミ、イノシシ、シャモア、シカなど、ヨーロッパの大型動物が生息しており、ヨーロッパユキハタネズミ、ジリス、シロハラヒメメクラネズミなどの小型哺乳類、ハンエリヒタキ、オオアカゲラなどの鳥類も生息しています。ブルガリア国内の中央バルカン国立公園はユネスコの生物圏保護区に指定されており、一部は世界遺産の「カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林」に指定されています。

観光

バルカン山脈には、ヴルシェツ、シプコヴォ、ヴォネシタ・ヴォダなどの温泉地があります。また、登山やハイキング、スキーなどのアクティビティも楽しめます。特に中央バルカン国立公園は、手つかずの自然が残されており、多くの観光客が訪れます。歴史的な戦いの舞台となったシプカ峠には、戦没者を祀るロシア正教会の聖堂があります。

バルカン山脈は、その豊かな自然と歴史的な背景から、ブルガリアだけでなくバルカン半島全体にとっても重要な場所です。訪れる人々を魅了し、その多様な魅力を伝えています。

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