メソポタミヤの殺人

メソポタミヤの殺人 (Murder in Mesopotamia)

概要

アガサ・クリスティによる本作『メソポタミヤの殺人』は、1936年に発表された長編推理小説です。著名な探偵エルキュール・ポアロが活躍するこの作品は、クリスティの中近東におけるシリーズの第一作として名を馳せています。日本語版は『殺人は癖になる』というタイトルで創元推理文庫から出版されています。

あらすじ

物語は、イラクのアッシリア遺跡の調査に関わるエイミー・レザランという看護婦から始まります。彼女は考古学者ライドナー博士の指示で、妻であるルイーズの付き添いを任されます。ルイーズは神経質で、自分が殺されることを恐れていました。この恐怖の背後には、彼女が死んだはずの前夫フレデリック・ボスナーからの脅迫状があったのです。このフレデリックは、スパイの疑いで逮捕された後に脱走し、列車の転覆事故で死亡したとされています。ルイーズはそのことをレザランに告げ、相手の存在を恐れ続けていました。

その後、ルイーズが自室で殴殺されているのが発見されます。彼女の部屋の窓には内側から鍵がかかり、現場には出入りした人間がいないと証言する少年がいました。しかし、この少年は屋上にいたライドナー博士に呼ばれて10分間場を離れていました。警察は外部からの侵入が不可能だと判断し、犯人は調査隊の中にいると推測します。そのため、エルキュール・ポアロが事件の調査に呼ばれることになります。

調査の過程で、ポアロは様々な証言を集め、疑わしい人物を特定していきます。ルイーズの知人であるアン・ジョンソンは、殺害を目撃したかもしれないと発言しますが、具体的な情報は得られません。さらに、ルイーズには特にライドナーの旧友であるリチャード・ケアリーが熱心にアプローチしていました。ポアロはルイーズの最初の夫の存在に注目し、ボスナーや彼の失踪した弟ウィリアムが関与しているのではないかと考えます。

物語は緊迫感を増し、ポアロは次々と真実を追い求め、ついにルイーズの死に関する重要な手がかりを見つけ出します。ルイーズの葬儀後、レザランはジョンソンとの会話の中で、何か秘密を抱えている様子を感じ取ります。ジョンソンはその後、自ら塩酸を飲んで倒れてしまい、彼女の口からは「窓」という言葉が漏れます。

ポアロは調査を進め、ついに犯人を突き止めます。それはライドナー博士でした。彼は実は15年前の列車事故で死亡した本物のライドナーに身分を偽っていたのです。彼はルイーズへの深い愛情を抱きつつも、彼女が他の男性と関係を持つのを察知し、脅迫を繰り返していました。最終的に、彼はルイーズを殺害し、彼女の死体を隠蔽するまでに至ります。

また、ポアロの調査によって、調査班の中に潜む泥棒も明らかになります。盗品商のラウール・メニエは、ライドナーに偽装して発掘現場に入り込み、美術品を盗んでいました。ポアロが得た情報により、彼とその仲間は逮捕され、その後の展開も描かれます。

最終的に、シーラはディヴィッド・エモットと結婚し、レザランはイギリスへ帰国する運びとなります。『メソポタミアの殺人』は、道徳的な問題や人間関係の複雑さを描き出すと同時に、サスペンス満載の推理小説として、アガサ・クリスティの名作に名を連ねる作品です。

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