メトリックスラグ

メトリックスラグは、MKS重力単位系における質量の単位であり、1939年にN.F.ビアズレーによって考案されました。スラグという単位は、ヤード・ポンド法における質量単位であり、メトリックスラグは、そのメートル法版として導入されました。この単位は、工学分野で用いられることもあり、別名としてマグ(mug)、パール(par)、TME(Technische Masseneinheit)などがあります。また、ヒル(hyl)という名称も用いられますが、これはcgs重力単位系における質量単位、すなわち0.001メトリックスラグを表す場合もあります。

定義と値

国際[単位系]や通常のMKS単位系では、力は運動方程式 F=ma に基づいて質量と加速度から導き出される組立単位です。一方、重力単位系では、力が基本単位となり、質量は m=F/a に基づき、力と加速度から導き出される組立単位として定義されます。具体的には、1メトリックスラグは、1キログラム重(kgf)の力を受けた時に1m/s²の加速度を生じる質量と定義されます。

この定義から、メトリックスラグは kgf/(m/s²) で表されます。ここで、kgfは[キログラム]と標準重力[加速度]の積であるため、メトリックスラグをkgで表した値は、標準重力加速度をm/s²で表した値と等しくなります。標準重力加速度は、g=9.80665 m/s²と定義されているため、メトリックスラグは正確に9.80665kgとなります。この関係性は、重力単位系と国際単位系との橋渡しをする上で重要な意味を持ちます。

メトリックスラグの意義

メトリックスラグは、工学分野、特に力学の計算において、質量を直接的に扱う上で便利な単位です。国際単位系における質量の単位であるキログラムとは異なり、メトリックスラグは、力と加速度の関係から直接的に定義されるため、重力を考慮した計算を行う際に、より直感的に扱うことができます。例えば、ある物体に特定の力が加わったときに、どれだけの加速度が生じるかを計算する際、メトリックスラグを用いることで、計算が簡略化される場合があります。

しかし、現代の科学技術では、国際単位系が広く用いられているため、メトリックスラグは専門分野以外ではあまり使われることはありません。それでも、重力単位系を用いた古い文献や技術資料を解読する際には、この単位の知識が不可欠です。特に、土木工学や機械工学などの分野では、過去にメトリックスラグが使用されていた経緯があるため、その概念を理解しておくことは非常に重要です。

まとめ

メトリックスラグは、MKS重力単位系における質量単位であり、重力単位系特有の考え方に基づいています。これは、力学計算における質量を直接的に表現するのに役立ちますが、国際単位系が普及している現代では、使用頻度は高くありません。しかしながら、過去の技術資料を読み解く上では、この単位の知識は重要です。メトリックスラグを理解することは、力学の基礎概念を深め、様々な単位系を使いこなす上での一助となるでしょう。

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