メドチ

メドチ（メドツ）の伝説

メドチまたはメドツは、青森県に伝わる河童の一種で、その奇妙な姿と不気味な振る舞いから、地元の人々に恐れられ、また興味を引く存在となっています。メドチは、猿のような顔と黒い体を持ち、一見すると10歳前後の子供に見えますが、時には少女の姿を取って人間を誘惑し、川に引き込むといった邪悪な行動に出ると言われています。

彼らは、溺れさせるために人間を誘惑し、さらには人間と子供を作らせることもあるという噂もあります。また、一度人間を襲うと、相手の友人や親戚に姿を変えて再び彼らを川へ誘うとされています。このように、メドチは人間に対して常に危険をもたらす存在であるため、地元では注意が呼びかけられています。

津軽弘前の郷士である平尾魯遷の著書『谷の響』には、メドチに襲われて溺れかけた子供を助けた人のエピソードが記されています。彼は子供を助けるため、その子供に水を吐かせると、そこから長さ1尺6寸7寸の奇妙な存在が出てきたのです。頭が大きくて平たい体のその存在は、周囲を狂ったように走り回り、攻撃してきたため、川の方に逃げていったという恐ろしい体験が語られています。

青森県にある櫛引八幡宮には、メドチにまつわる面白い伝承が残されています。江戸時代の名工とされる左甚五郎が、本殿を建設する際に出た木屑を川に捨てたところ、その木屑が「これから何を食えばいいか」と問いかけたのに対し、甚五郎が「尻でも食らえ」と答えたため、木屑がメドツとなって人を襲うようになったと言われています。別の説では、甚五郎が作業に使用した木偶人形を本殿完成後に川に捨てたことが原因視されています。

また、八幡宮ではメドチを鷹で懲らしめるという逸話も存在します。鷹がメドチの頭を突くことで、メドチの頭はへこんで毛が生えなくなってしまったそうです。しかし、八幡宮はメドチが人を襲わないと消えてしまうことを哀れみ、旧暦の7月1日から16日の間で人間1人と馬1頭を襲うことを許すという特例を設けていたという伝承も残されています。

現代では、櫛引八幡宮の本殿には鷹に抑えられたメドチの彫刻が残されていますが、長い年月の風雨によって彫刻は劣化し、その姿を確認することは難しくなっています。

さらに興味深いことに、青森県八戸市の尻内町には「メドツ河原」という地名が存在し、地元の伝説とともに人々の記憶に刻まれています。メドチはただの伝説ではなく、青森県に住む人々の文化や風習に融け込み、その姿や物語は今もなお受け継がれています。

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