メリケン向かい飛車

メリケン向かい飛車：7筋の急襲と柔軟な対応

メリケン向かい飛車は、将棋の振り飛車戦法の一つです。先手であれば飛車を8筋に、後手であれば2筋に振り、7筋（先手の場合）または3筋（後手の場合）の位を取る攻撃的な戦型です。その特徴は、左に金が上がる攻撃型向かい飛車でありながら、7筋（または3筋）という独特の位取りによって、多彩な攻めと持久戦への対応力を両立している点にあります。

この戦法は、アマチュア将棋で数々の全国大会を制した横山公望氏が開発しました。戦法名の由来は、横山氏の出身地である横浜の港町、メリケン波止場（大さん橋）から連想されたものです。

7筋位を取る積極性

メリケン向かい飛車の基本形は、▲6七銀から▲7五歩と、7筋の位を取ることです。この位取りによって、居飛車側は飛車先の△8五歩を早々と伸ばすことをためらいます。もし△8五歩と伸ばして来たとしても、▲8八飛から鋭い攻めを仕掛けられます。

▲7五歩を先に決めてから飛車を振る、という指し方もあります。これは石田流への含みを持たせることで、相手の対応をさらに難しくする効果があります。

後手が△5二金右と対応した場合、▲8六歩△同歩▲同飛と、いきなり仕掛けを仕掛けることも可能です。向かい飛車側は左金型なので飛車の打ち込みに強く、飛車交換は後手居飛車側が不利になりやすいです。後手が△8五歩と飛車先を伸ばしてきても、▲8八飛～▲7六銀と反撃できますし、△8四歩なら▲8八飛～▲7六銀の他に、▲7六飛と回って石田流のようにして反撃する選択肢もあります。

7筋を伸ばすことで銀がスムーズに進出でき、居飛車が飛車先を伸ばしてこなくても、反撃しやすい態勢になります。また、▲6五歩からの角交換も有効な反撃手段の一つです。

持久戦への対応力

▲7六銀から▲6七金と構えることで、持久戦に持ち込むことも可能です。この形でも、▲9七桂～▲8五銀、あるいは1歩持った後の▲8六歩△同歩▲8五歩といった反撃手段が用意されています。常に8六からの仕掛けの脅威があるため、居飛車側は穴熊を採用しづらくなります。また、振り飛車側は左金を5七～4七に引き付けて囲いを固めることも可能です。

歴史と角交換型

メリケン向かい飛車は現代将棋の戦法ですが、その原型は古くから存在していました。寛文三年（1663年）刊行の『象戯鏡』には、慶長13年（1608年）の対局で、後手の算砂が△3四銀型の向かい飛車の陣を採用した記録が残っています。

角交換型でもメリケン向かい飛車に類似した戦型が現れます。先手の升田式石田流からの変化や、▲6九飛から▲8九飛への転換など、様々な局面でこの戦法のアイデアが活用されています。

後手番でも応用可能です。四間飛車に構えてから、鋭い攻めを仕掛ける展開も可能です。

まとめ

メリケン向かい飛車は、7筋の位取りと多彩な攻め、持久戦への対応力を兼ね備えた、奥の深い戦法です。古くから存在する戦法でありながら、現代将棋においても発展を続け、多くの棋士や愛好家に親しまれています。その柔軟性と攻撃性から、今後も将棋界において重要な戦法として発展していくでしょう。

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