四間飛車

四間飛車：攻守のバランスに優れた普遍的な戦法

四間飛車は、将棋における振り飛車戦法の一種です。先手であれば飛車を6筋に、後手であれば4筋に振ることで名付けられました。振り飛車の中でも高い人気を誇り、その理由は攻守のバランスの良さ、そして柔軟性の高さにあります。

四間飛車の基本と戦術

四間飛車の基本的な囲いは美濃囲いですが、居玉や穴熊囲い（四間飛車穴熊）を採用することもあります。状況に応じて向かい飛車や中飛車、石田流などに変化することもできるため、相手の手筋に対応しやすく、幅広い戦術展開が可能です。

対する居飛車側は、急戦（居飛車舟囲い急戦など）や持久戦（左美濃、居飛車穴熊など）といった様々な戦法で応戦します。現代将棋では、これらの戦法に対する定跡も高度に洗練されています。

四間飛車の歴史とプロ棋士

四間飛車の歴史は古く、17世紀初頭には既に用いられていた記録が残っています。大山康晴十五世名人らが得意戦法として用いたことで広く知られるようになり、森安秀光九段らも四間飛車を得意としたことで有名です。特に大山、森安両名全盛期には、四間飛車とその対策に関する研究が盛んに行われ、居飛車穴熊や左美濃といった戦法が主流となりました。

その後、小林健二九段による「スーパー四間飛車」や、藤井猛九段による「藤井システム」といった新たな戦法が登場し、四間飛車の研究はさらに進展しました。これらの革新的な戦法は、四間飛車の衰退を食い止めるだけでなく、新たな局面を作り出し、将棋界に大きな影響を与えました。 しかし、近年は居飛車側の研究が進み、プロ棋戦での採用率は減少傾向にあります。

四間飛車の派生戦法

四間飛車には、様々な派生戦法が存在します。代表的なものとして以下が挙げられます。

藤井システム: 藤井猛九段によって考案された、居飛車穴熊対策として有効な戦法です。升田幸三賞を受賞しています。
立石流四間飛車: アマチュア棋士、立石勝巳氏によって考案された戦法で、升田幸三賞特別賞を受賞しています。
玉頭銀: 左銀を用いて相手の玉頭筋を攻撃する戦法です。
角交換四間飛車: 角道を止めることなく、角交換から四間飛車に進む戦法。藤井猛九段が居飛車穴熊対策として用いたことで有名になり、升田幸三賞を受賞しています。
レグスペ (レグホン・スペシャル): 角交換振り飛車から穴熊囲いを構築する戦法です。
耀龍四間飛車: 大橋貴洸七段が考案した戦法で、升田幸三賞を受賞しています。
魔界四間飛車: 左金を7六に移動させ、7筋の位を取る独特な戦法です。

四間飛車の現状と未来

プロ棋戦における四間飛車の採用率は減少傾向にあるものの、依然として多くの棋士が研究を続けています。特に四間飛車穴熊は、広瀬章人八段が王位を獲得するなど、大きな成果を上げており、その有効性は依然として高いと言えます。

また、角交換四間飛車など、新たな戦法も登場しており、四間飛車の可能性は未だ尽きていません。今後も、新たな戦術や定跡の開発、そしてプロ棋士たちの創意工夫によって、四間飛車は将棋界で重要な戦法として進化を続けることでしょう。

参考文献

上野裕和 (2014), NHK将棋講座 2014年9月号 別冊付録 上野裕和のNHK杯の序盤がわかる! (2) 角交換四間飛車 / ダイレクト[[向かい飛車]], NHK出版
* 阿部健治郎 (2012), 四間飛車激減の理由 (マイナビ将棋BOOKS), マイナビ出版

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